採用戦略
採用戦略
2026.1.27
この記事の監修者:
株式会社アズライト 佐川稔

「求人広告を出しても応募が来ない」「ようやく集まった候補者も、志望度がいまひとつ」
このような悩みを抱える企業にとって、いま注目されている手法が採用広報です。
採用広報とは、求人情報だけでなく、企業の理念やビジョン、働く環境、社員の声などを多様なチャネルで発信し、理想の人材との接点を築くための戦略的アプローチです。
SNSや動画、オウンドメディアを活用して企業のリアルな姿を伝えることで、応募者との信頼関係を深め、ミスマッチのない採用につなげる効果が期待されています。
そこで今回は、採用広報の定義から実施ステップ、成功事例、最新トレンドまでを網羅的に解説します。採用活動の質を高めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

採用広報とは、企業が自社の魅力や価値観、働き方、ビジョンを主体的に発信し、理想とする人材との接点を築く取り組みを指します。
従来の求人広告や募集要項の掲載にとどまらず、SNSやオウンドメディア、動画、社員インタビューなど多様な手法を通じて、企業のリアルを伝える点が特徴です。
応募数の増加や入社後のミスマッチ低減、採用コスト削減といった成果が期待されており、労働人口の減少や価値観の多様化が進む現代において重要性が高まっています。

少子高齢化による人手不足や価値観の多様化、そして情報収集手段の変化により、従来の採用手法だけでは人材確保が難しくなってきています。
ここでは、採用広報が注目されている背景について解説します。
採用市場が売り手優位となる現在、転職意欲はあるものの具体的な行動を起こしていない「転職潜在層」へのアプローチが重要視されています。この層は労働人口の大多数を占めており、将来的な採用機会を広げるうえでも見逃せない存在です。
転職潜在層の方たちは、企業の文化や価値観に強い関心を持ち、条件提示だけでは心を動かしにくい傾向があります。そのため、自社の理念や働き方を継続的に伝える採用広報が、接点形成の効果的な手段となります。
早期に関係を築くことで、他社との競争が本格化する前に志望意欲を高められる点もメリットです。
スマートフォンやSNSの普及により、情報発信の主軸はマスメディアからデジタルメディアへと移行しています。採用活動においてもその影響は大きく、Z世代やミレニアル世代は企業情報をWebやSNSで収集する傾向が強まっています。
たとえば、メディア接触時間の割合は以下のとおりです。
テレビ・新聞など:約40%
デジタルメディア:約60%
このような変化の中では、求人を出すだけでは応募につながりにくくなります。企業は自ら情報を発信し、候補者との接点を築く姿勢が不可欠です。
少子高齢化の進行により、生産年齢人口は年々減少しており、企業の多くが人材確保に苦戦しています。特に中小企業では、有効求人倍率の上昇により求人を出しても応募が集まりづらく、採用の長期化が増加傾向です。
こうした売り手市場では、従来の求人広告だけでは母集団形成が難しく、自社の魅力を求職者に伝える「採用広報」の重要性が高まっています。
求職者に選ばれる企業を目指すうえで、企業文化や働き方、社員の声などを積極的に発信し、認知度と共感を高める戦略が不可欠です。

求人広告だけでは伝えきれない企業の魅力を、さまざまなチャネルで発信できる点に採用広報の強みがあります。
ここでは、採用広報を実施することで得られる主なメリットについて解説します。
採用広報の大きなメリットの1つに、企業の知名度や認知度を高められる点が挙げられます。特にBtoB企業や中小企業では、社名や事業内容が十分に知られておらず、求人情報だけでは応募対象として意識されないことが多いです。
このような場合でも、オウンドメディアやSNSを通じて継続的に情報を発信すれば、転職潜在層にも接点を持ちやすくなります。
さらに、採用広報によって企業名が想起されやすくなるため、転職活動のタイミングで候補に挙がる可能性も高まります。
採用広報を実施することで、求職者の自社に対する理解も深めやすくなります。募集要項だけでは伝わりづらい企業文化や業務の実態を、視覚的かつ具体的に示すことで、入社前の段階から働くイメージを持つことができます。
特に、良い点に加えて課題も開示する姿勢は、企業と求職者の認識の差を埋め、早期離職のリスクを抑えるうえでも効果的です。
さらに、自社の価値観に共感する人材が集まりやすくなるため、選考段階での志望度が高く、対話の質も向上します。
採用広報を行うことで、企業イメージの向上にもつながります。特にBtoB企業や中小企業では、社名や事業内容が求職者に十分に知られていないことが多く、従来の求人情報だけでは魅力を十分に伝えきれない現状があります。
そこで、オウンドメディアやSNSを活用し、企業文化やビジョン、社員の姿を率直に発信する取り組みが効果的となります。透明性のある情報発信によって信頼感が醸成され、「誠実な会社」「働きやすそうな職場」といった好印象の形成が可能です。
こうした企業イメージの向上は、エントリー率や内定承諾率の改善につながります。さらに、ブランド価値や従業員エンゲージメントの向上にも波及します。
採用広報を通じて企業理念や働き方、社員のリアルな姿を発信することは、候補者の企業理解を深め、志望度を高めるうえでもメリットとなります。
情報開示が乏しい企業は、他社と比較された際に、選考の優先順位が下がりやすいです。一方で、積極的な情報発信によって共感や信頼を得られれば、「この会社で働きたい」という意欲の醸成につながります。
さらに、志望度の高い候補者は選考辞退が少なく、面接から内定までのプロセスが円滑に進みやすい点も魅力です。
採用広報のもう1つのメリットが、入社後のミスマッチ防止です。採用段階で企業の実態が十分に伝わらなければ、入社後に「想像と違う職場だった」と感じる人が増え、早期離職につながるおそれがあります。
実際、スタートアップ転職者の約九割がなんらかのギャップを経験しているという調査結果もあるほどです。
採用広報では、1日の業務スケジュールや職場の雰囲気、社風、チーム構成などを具体的に示すことで、求職者自身が入社前に適性を判断しやすくなります。
採用広報を積極的に行うことで、選考のスピードを高める効果も期待できます。自社のビジョンやカルチャー、働き方を事前に発信しておくと、内容に共感した求職者が応募するため、志望度の高い人材が集まりやすいです。
その結果、書類選考から面接、内定に至るまでの工程が円滑に進み、スクリーニングに要する工数を削減できます。
加えて、応募段階で企業理解が深まっている応募者が多ければ、面談では説明よりも対話に時間を充てられるため、より実のある相互理解を図ることができます。

採用広報を成功に導くうえで重要なのは、やみくもに発信を始めるのではなく、目的やターゲットを明確にし、戦略的に取り組む姿勢です。
ここでは、採用広報を実施する際の基本的な流れについて解説します。
採用広報を効果的に進めるために欠かせないのが、情報発信の軸を明確にすることです。まずは自社の採用課題を整理し、「何のために誰に伝えるのか」を明確にします。
たとえば、認知度を高めたい場合はミッションやビジョンの紹介、ミスマッチを防ぎたい場合は社員インタビューや制度紹介がおすすめです。
軸を定める際は、以下の6項目で自社の特徴を言語化すると、伝えるべき情報が明確になります。
市場:提供価値の対象
事業:提供手段
業務:日々の仕事内容
人:求める人物像
文化:組織に根付く価値観
制度:支援・評価の仕組み
これらを踏まえて発信内容を整理することで、戦略的にコンテンツを設計できます。
採用広報を成功に導くうえで重要なのが、「誰に何を伝えるか」を明確にすることです。まずは人材要件をMUST・WANT・NEGATIVEに整理し、現場とのすり合わせを経て、ペルソナとして具体化します。
たとえば「営業経験3年以上」「20代後半」など、求める人物像を明文化することで、訴求軸や媒体選定の精度が向上します。
また、自社の魅力を伝える要素は一定の枠組みで整理しておくと、情報設計に一貫性が生まれ、共感を得やすいコンテンツ設計が可能です
採用広報の戦略では、コンテンツ企画が要です。「誰が・何を・どう語るか」の視点で整理すると、効果的な情報発信につながります。
たとえば以下のような掛け合わせが考えられます。
若手社員:研修や成長の実感
中堅社員:評価制度や働きがい
管理職:組織方針やビジョン
女性社員:制度活用や働き方
新卒社員:入社理由やギャップ
このように語り手と内容を掛け合わせることで、バリエーション豊富な企画を無理なく設計できます。
発信の優先順位を見極め、自社の採用課題に直結するテーマから着手すると効果的です。
採用広報では「誰に、何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか=発信方法」の選定も重要です。
媒体ごとに特性が異なるため、自社の採用戦略やターゲット層に応じて使い分けることが効果的です。継続運用のしやすさも踏まえ、自社に合った手法を選びましょう。
主な発信方法は以下のとおりです。
発信方法 | 特徴・メリット | 向いている目的 |
|---|---|---|
SNS | 拡散力が高く若年層に届きやすい | 認知度向上・ファン化 |
オウンドメディア | 自由度が高く深い情報発信が可能 | 企業理解・ブランディング |
イベント | 直接交流により志望度を高めやすい | ミスマッチ防止・ファンづくり |
目的に応じて複数の手法を組み合わせることが効果を高めるうえで効果的です。
戦略的なKPI設計も、採用広報の効果を高めるうえで重要な要素です。KGIから逆算し、各フェーズに応じたKPIを設定することで、進捗を明確に把握できます。
たとえば、以下のような指標が代表的です。
認知:サイトPV、SNSフォロワー数
関心:滞在時間、資料DL数
比較:説明会参加数、遷移率
応募:応募数、応募単価
選考:通過率、内定承諾率
KPIは結果と行動の両面で設計し、SMARTの原則に沿って管理することが肝心です。可視化と見直しを習慣化すれば、採用広報の質を継続的に高められます。

自社の魅力を伝える手段を適切に選ぶことが、採用広報を成功に導くポイントです。ここでは、採用広報で活用される代表的な手法について解説します。
SNS運用は、今注目される採用広報の手法の1つです。X(旧Twitter)やInstagram、YouTube、TikTokを活用することで、企業の魅力や職場の雰囲気を効果的に発信できます。採用市場にいない潜在層にもアプローチでき、認知度向上やブランディングにも貢献します。
各SNSの特徴と主なターゲット層は以下の通りです。
SNS媒体 | 特徴 | 主なターゲット層 |
|---|---|---|
X(旧Twitter) | 拡散力・リアルタイム性が高い | 学生・若年層 |
視覚訴求に強く、社風が伝わりやすい | 若年層・女性求職者 | |
YouTube | 情報量が多く、印象に残りやすい | 全世代(特に中途・経験者) |
TikTok | ショート動画で接点を持ちやすい | Z世代・若手の潜在層 |
オウンドメディアは、自社が運営する採用サイトなどを通じて求職者に情報を発信する採用広報の手法です。媒体の制約が少なく、理念や働き方、社員の声などを自由に伝えることができます。
応募前の企業理解を促し、ミスマッチの防止にも効果的です。継続的な発信により、潜在層への認知拡大や採用競争力の強化にもつながるため、中長期の採用戦略として活用が進んでいます。
オフラインでの採用イベントは、会社の魅力を求職者に直接届ける手段として効果的です。説明会やオフィスツアー、座談会を通じて、Webや資料では伝えにくい雰囲気や文化、社員の人柄を体感してもらえます。短期間で人材を集めたい場面でも、志望度の向上が期待できます。
さらに、参加者の反応をその場で把握できるため、選考前の温度感をつかみやすく、ミスマッチの防止にも効果的です。
一方で、運営に一定の工数がかかるため、目的を明確にし、伝えたい内容に応じて計画することが成功のカギとなります。
採用動画は、企業の雰囲気や社員の人柄を直感的に伝えられる手法として注目されています。
特にZ世代・ミレニアル世代は動画から情報を得る傾向が強く、応募意欲にも影響します。なかでも以下のような形式が効果的です。
社員インタビュー:働き方や人柄を可視化
ドキュメンタリー形式:業務の流れを具体化
ストーリーテリング型:理念を物語として共有
インタラクティブ動画:職種別に情報提供
動画はSNSや採用ページと連動させることで、認知拡大と母集団形成の両立が可能です。限られた採用工数でも成果を上げやすいため、短期採用を目指す企業に適しています。
採用ピッチ資料は、求職者に企業の実像を伝える採用広報ツールです。職場環境やカルチャーを視覚的に共有することで、応募前の理解を深め、志望度の向上にもつながります。特にダイレクトリクルーティングやSNS採用と相性が良く、採用の質を高める効果的な手段です。
主な効果として、以下が挙げられます。
志望度の向上
面談の効率化
ミスマッチの抑制
説明の標準化

SNSや動画といったデジタル施策が主流となった採用広報では、ターゲットへの情報の届け方が成功を大きく左右します。
ここでは、実際の成功事例をもとに、いま注目すべき採用広報の最新トレンドについて紹介します。
現在、SNSで社名を検索する行動は、就職活動の基本行動となっています。リソースクリエイションの調査では、就活生の82.8%がSNSで企業名を検索し、Instagramが73.3%、TikTokが35.2%を占めました。画像や動画で社員の雰囲気を感じ取れる点が支持の理由とされています。
さらに、企業アカウントを見て入社意欲が高まった学生は88.6%に達し、採用広報の効果が明確に示されています。
社名検索を前提としたSNS運用は、もはや採用のトレンドではなく、企業が選ばれる条件の1つです。派手さよりも空気感を伝える誠実な発信がポイントとなります。
参考:PR TIMES「【559名に調査】就活生の9割が企業のSNSアカウントは必要と回答」
2026年の採用広報では、「動画×SNS」の活用がトレンドとなっており、共感を呼ぶコンテンツ設計が成功事例に共通しています。特にZ世代を意識した短尺動画や社員密着型の形式が注目され、企業のリアルな魅力を伝える手段として機能しています。
たとえば、
スマホ視聴に適した縦型ショート動画
働く姿を描いた1日密着ドキュメント
職種別に選べるインタラクティブ動画
企業理念を語るストーリーテリング型
といった形式が用いられています。
こうした視覚的な手法は、情報伝達力を高めるだけでなく、応募者の共感や理解を促進し、採用の質にも良い影響を与えています。
2026年の採用広報トレンドでは、求職者の価値観や行動に合わせた「特化型コンテンツ」も注目されています。職種や世代ごとに情報を最適化することで、共感を得やすくなり、応募意欲や歩留まりの改善につながっています。
Z世代向けはショート動画、中途層向けは密着型ストーリー、専門職向けは解説動画など、ペルソナに応じた表現が成果を上げているのが特徴です。
情報の伝え方だけでなく、「誰に何を感じさせるか」を軸に構成することが、採用広報を成功に導くポイントとなります。

採用広報は、ただ情報を発信するだけでは成果につながりません。
ここでは、採用広報を成功させるために押さえておきたい実践的なポイントについて解説します。
採用広報では、目的に応じた情報発信が成果を左右します。たとえば、認知度向上を狙うなら企業理念や事業内容、志望度を高めたいなら社員の声や働き方、ミスマッチ防止には業務の流れやFAQが効果的です。
認知度向上:企業理念/事業内容/代表メッセージ/数値情報
志望度向上:社員インタビュー/働き方紹介/福利厚生
ミスマッチ防止:オフィス風景/1日の業務/よくある質問
採用課題に合った発信で、狙う人材に届くコンテンツを設計しましょう。
企業のミッションやビジョンは、採用広報の核となる情報です。何を目指し、どのような価値を提供する企業なのかを明確にすることで、共感を呼び、志望度や定着率の向上につながります。
特に近年は、「働きがい」や「社会的意義」を重視する傾向が強く、理念の発信が母集団形成の質にも影響するのです。たとえば以下のように整理しておくと、伝達力が高まります。
ミッション:存在目的への共感を促す
ビジョン:目指す未来を共有し、志望意欲を高める
バリュー:価値観の一致からカルチャーフィットを判断
まずは理念を明文化し、自社サイトで発信することが効果的です。
採用広報の効果を高めるうえで重要なのが、人事や広報だけでなく、現場や経営層も巻き込んだ全社的な協力体制です。
社員インタビューや働き方を紹介する際は、実態に即した情報と各部門の協力が欠かせません。特に理念や文化を発信する際は、経営層の関与が信頼性を高める要素となります。
以下のように役割を分担することで、情報の一貫性と現実性が両立できます。
人事:採用情報の整理とターゲット設計
広報:表現の調整と媒体選定
各部門:業務内容の提供や取材対応
経営層:理念やビジョンの発信
こうした体制がミスマッチ防止にもつながり、採用広報の土台となります。
採用広報は即効性を求める施策ではなく、企業の魅力を継続的に発信し、時間をかけて効果を積み上げる中長期的な取り組みです。
特にSNSやオウンドメディアは、潜在層との接点を広げ、信頼を築く手段として効果的です。継続することで応募母集団の質と量の向上にもつながります。
採用競争が激化する今、経営層や現場社員も巻き込んだ全社的な取り組みによって、採用力の土台を強化することが求められます。
採用広報は、単なる求人活動にとどまらず、自社の理念や魅力を継続的に発信し、求職者との信頼関係を構築する中長期的な戦略です。特に、転職潜在層へのアプローチやミスマッチの防止、選考の効率化において大きな効果を発揮します。
自社に合った発信軸とターゲットを明確にし、SNSや動画、オウンドメディアなどを柔軟に活用することで、採用競争力の強化が可能となります。自社らしい採用広報に一歩踏み出しましょう。
採用戦略を立てるのが難しい、ノウハウがないという場合はプロへ相談しましょう。採用戦略が得意なアズライトなら課題解決に役立ちます。

この記事の監修者
株式会社アズライト 佐川稔
株式会社アズライト代表取締役。採用がうまくいかない優良企業を採用できる企業へ改革するために、戦略・運用に特化した採用コンサルティングファーム「株式会社アズライト」を創業。キャリアに悩む方々のために就活・転職相談BAR「とこなつ家」を池袋にて共同経営中。
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