採用戦略
採用戦略
2026.1.21
この記事の監修者:
株式会社アズライト 佐川稔

「求人を出しても応募が集まらない」「採用コストが高く、効率が悪い」
人事担当者は、自社の魅力の伝え方に課題を感じていませんか。
近年、条件や待遇だけでは他社との差別化が難しく、候補者は企業の価値観を重視して就職先を選ぶ時代に変化しています。
こうした背景から注目されているのが「採用ブランディング戦略」です。企業の理念や文化、社員の姿を通して自社を選んでもらうための仕組みをつくり、母集団の質向上や採用コストを削減できます。
本記事では、採用ブランディング戦略の定義やメリット・デメリット、設計方法、外注のポイントを解説します。

採用ブランディング戦略とは、自社ならではの価値を明確にし、候補者から選ばれる企業をつくる取り組みです。
ここでは、採用ブランディングを広報やマーケティングと比較しながら解説します。
採用ブランディング | 採用広報 | |
|---|---|---|
目的 | 長期的に選ばれる企業をつくる | 認知や応募を増やす |
期間 | 中長期(信頼・共感を得る) | 短期(応募・アクセスの増加) |
役割 | 採用の世界観やメッセージを設計 | 設計されたメッセージを発信 |
採用ブランディングと広報は、役割に大きな違いがあります。採用広報は求人を募集するための情報発信であることに対し、採用ブランディングは長期的に企業の魅力を浸透させる戦略的な活動です。
両者を連動させることでメッセージに一貫性が生まれ、企業イメージが伝わりやすくなります。
採用ブランディング | 採用マーケティング | |
|---|---|---|
目的 | 企業の世界観・価値観を明確にする | 効果的に応募へつなげる仕組みを作る |
期間 | 中長期的(信頼・共感を得る) | 短期(応募数の増加を狙う) |
役割 | 候補者の感情導線を設計 | 候補者の行動導線を設計 |
採用ブランディングとマーケティングは戦略を立てる点では共通していますが、目的とアプローチの方向性が異なります。
採用ブランディングは候補者の共感を得るための信頼づくりをするのが特徴です。採用マーケティングはブランディングを活かし、応募を促すための設計を行います。
どちらも両立させて戦略を練ることで、応募の質と量を高められます。

採用ブランディングが注目されている背景として、人材獲得の競争が激化していることや候補者の価値観の多様化が挙げられます。
少子高齢化による労働人口の減少に伴い、リモートワークの推進や副業が解禁され、働き方の選択肢が広がりました。時代の変化に合わせて、条件面で優れた会社を選ぶのではなく、候補者の判断軸は自分らしく働けて、企業文化に共感できる点が重視されています。
企業は候補者の価値観の変化に対応し、選ぶ側から選ばれるための戦略設計が必要です。自社の想いを明確にし、外部発信を一貫させる「採用ブランディング」への関心が高まっています。

ブランディングが確立できていない企業はメッセージに一貫性がなく、採用活動が行き当たりばったりの対応になりかねません。ブランディングの戦略に取り組むことで、スムーズに採用活動が行えます。
ここからは、採用ブランディング戦略を構築するメリットを紹介します。
採用ブランディング戦略の構築はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を基盤に行うため、企業文化の再定義につながります。
企業理念は会社が進むべき方向性と社内の一体感を生み出す軸であり、採用の他にも組織運営の土台となる基本的な考え方です。経営や採用・広報・マーケティング部門の発信軸がバラバラな企業は、ブランド力が弱まってしまいます。
一方で、理念が明確な企業はメッセージに一貫性が生まれるため、社内外でブレない企業イメージの構築が可能です。理念が統一していることで候補者は企業に共感しやすくなり、入社後の定着率が向上します。
採用ブランディング戦略は社内の一体感やチームワークを高め、組織力の強化につながります。
企業理念や行動指針が再認識されているため、社員同士が同じ基準で判断・議論が進められます。結果としてスムーズに意思決定ができ、採用だけでなく業務面でも生産性が向上する点がメリットです。
採用ブランディングをきっかけに打ち出したメッセージが、社内の共通言語化され、組織風土の改善に発展することもあります。
採用ブランディングは社外向けの発信だけでなく、社内の意識改革にも有効です。
採用ブランディングにより、企業の認知度や信頼が高まると求人広告を出さなくても応募がくる状態を作れるため、コストを大幅に削減できます。求人広告を利用した場合の採用コストは、一人当たり数十万円〜百万円以上になることも少なくありません。
採用ブランディングが確立している企業は求人媒体の依存から脱却し、オウンドメディアやSNS、自社サイトでの流入が増えることで、採用単価を抑えられます。
また、候補者は価値観や働き方に共感して選考へと進むため、ミスマッチ応募が減少します。
採用ブランディングの強化は、自社が大切にしていることや求める人物像を明確に発信するため、価値観に近い人材が自然と集まりやすくなります。
採用サイトや動画、SNSで社内の雰囲気を伝えることで、候補者は企業に対するイメージギャップを減らせます。価値観にマッチしていない人材の応募は採用活動の負担が増えるだけでなく、入社後は既存社員のモチベーション低下につながりかねません。
反対に、自社の理念・ビジョンに共感した人材は入社後も企業の方向性に納得感を持ちやすく、定着率も高まります。
採用ブランディングは自社ならではの魅力を明確に示せるため、競合企業との差別化ができます。
近年、給与や福利厚生、待遇は多くの会社で改善を進めているため、条件面で差別化を図ることが難しい状況です。複数の企業を比較する候補者は、独自の世界観やメッセージで選ぶ傾向が強まっています。
ブランド戦略にもとづき、採用サイト・動画・SNSを展開することで他社には真似できないリアルな差別化要素が作れます。
特に、知名度で大手企業に劣ってしまうベンチャーや中小企業は、社員を主役にした戦略設計が効果的です。
採用ブランディングは社外に向けた活動ですが、同時に社内への浸透を促します。自社の理念や価値観が社内に浸透すると、既存社員の企業に対する愛着や貢献意欲が高まる点がメリットです。
採用ページやSNSでインタビューを掲載する際、社員が自分の言葉で会社の魅力を語る機会を設けると、会社を代表している誇りが生まれます。映像を見た他社員の成長意欲が高まり、モチベーションの向上や離職率の低下に効果的です。

採用ブランディングは時間や労力をかけて取り組む施策だからこそ、人事担当者は社員の協力を得ながら、長期的な視点で進めることが欠かせません。
ここでは、採用ブランディング戦略を構築する際のデメリットについて解説します。
採用ブランディング戦略は広告のように即効性がある施策ではなく、数カ月〜数年単位で認知と信頼を積み重ねていく活動です。
すぐに結果を求めて発信を途中でやめてしまうと、ブランドの浸透が途切れてしまいます。
SNSや採用サイトでの発信を始めても、候補者の記憶に残るわけではありません。ブランディングは「認知→共感→応募→定着」のプロセスを経て効果が表れます。
採用ブランディング戦略は応募数や採用単価の数値で測れない部分が多く、経営陣から成果について疑問を持たれることも少なくありません。戦略段階で長期的な投資であることを明確にし、社内で進捗を共有できる仕組みを整えることが大切です。
採用ブランディング戦略は人事部だけで完結できるものではありません。経営層から現場社員まで、全社を巻き込んで取り組む必要があります。
企業の信頼性は、実際の社内体験と一致していることが重要です。人事担当者がどれほど魅力的なメッセージを発信しても、現場の文化が伴っていなければ候補者は入社後にギャップを感じていまいます。
社内で全員参加型のプロジェクトとして進めると、一貫した内容の発信が可能です。

採用ブランディング構築の際は、社内の方向性を統一するために、人事担当者は一貫した戦略を設計する必要があります。
ここからは、採用ブランディング戦略の構築方法を紹介します。
まずは発信の軸を決めるために、自社の理念と強みを明確にしましょう。理念や強みがあいまいなままでは採用メッセージが一般的で、他社との差別化ができません。
以下の手順で自社理念・強みを明確にしましょう。
採用活動における現状の課題と目的の明確化
経営層・現場・新入社員へのヒアリング
情報の整理・可視化
企業理念の再定義・言語化
採用目線での強みの抽出
自社の理念や強みが、採用ブランディング戦略の核となる部分です。経営理念・事業目的・社員の価値観をメッセージに落とし込むことで、ブランドの一貫性が確立します。
求めるペルソナ像を設計することは、メッセージの方向性と発信内容に一貫性を持つために欠かせない手順です。
ターゲットを明確に決めることで、発信のトーンやチャネルの選定を的確に行えます。
採用ターゲットを明確にする
既存社員の分析・インタビュー
候補者の情報源・検索行動の調査
理想のペルソナ像を具体化
ペルソナ設計では、年齢・職業・価値観・キャリア志向・行動パターンを具体的に書き出し、1人の人物を想像できるまで明確にすることが大切です。
ペルソナを設定したあとは、他社では得られない魅力を整理し、候補者が自社を選ぶ理由を明確にします。
採用におけるバリュープロポジションとは、仕事の意義や成長機会を候補者の期待や価値観に結びつけて、自社で働く理由を伝えるメッセージのことです。
社員の声を集めて実際の「自社の価値」を把握
候補者の価値観と期待を把握
自社で働くうえで得られる魅力の整理
メッセージの言語化
バリュープロポジションの定義は、採用メッセージに一貫性と説得力が生まれ、より採用ブランディング戦略の効果が高まります。
次に、候補者が企業と接触するすべての接点を洗い出しましょう。タッチポイントとは候補者が企業を認知し、情報を得て応募に至るまでの一連の接点のことです。
認知段階:SNS・採用動画・オウンドメディア
興味段階:採用サイト・社員インタビュー・ピッチ資料
応募段階:求人票・応募フォーム・説明会
入社前後:オンボーディング資料・社内交流イベント
ポイントはどの媒体を見ても企業のイメージと合致するように、カラーや構成を統一することです。
ここでは、ペルソナが主に利用する情報源を踏まえたチャネルの選定と、魅力が伝わるコンテンツを企画・制作しましょう。
候補者が情報収集する場所は多様化しています。新卒が対象ならInstagramやTikTok、中途採用を対象にしている場合はLinkedInやオウンドメディアが有効です。
採用サイト:社員インタビュー・制度紹介
SNS:日常や社員のストーリー
動画:オフィスツアー・ドキュメンタリー形式
同じメッセージでも形式や切り口を変えることで効果的に伝えられます。
採用ブランディングは目的に応じた指標を設定し、データに基づいた効果測定が欠かせません。応募数や内定率のKPIと採用ブランディングに関わるKPIを分けて設定し、効率的にPDCAを回せるよう、フレームワークの活用がおすすめです。
アクセス解析ツールでチャネル別の効果を可視化
内定者アンケートで応募のきっかけや企業の印象を調査
社員から採用活動の変化をヒアリング
定量データだけでなく、定性的な評価を取り入れることで、採用ブランディングの浸透度を正しく評価できます。

採用広報に取り組んでいるものの、思うように応募や反応が得られない場合は、チャネルの設計があいまいな可能性があります。採用ブランディング戦略は、自社のメッセージを最適な形で届けられるチャネルの選択が不可欠です。
ここからは、採用ブランディングに有効なチャネルを紹介します。
採用サイトは候補者が最も詳しく企業を知る場所であるため、ブランドの世界観や理念を伝えるうえで欠かせないチャネルです。SNSや求人媒体からの流入を受け止め、ブランドの全体像を伝える中核的な存在としての役割を担います。
自社の採用サイトの運用ポイントは以下のとおりです。
コンテンツの更新サイクルを設ける
SEO・アクセス解析を活用して改善する
社員が発信する仕組みを作る
採用サイトやページはブランドを体現するメディアとして設計することが重要です。
採用ピッチ資料はテキストよりもビジュアルを中心としたツールです。説明会やスカウト返信など柔軟に活用でき、候補者に自社の価値を短時間で印象付けられます。
以下は、採用ピッチ資料の運用ポイントです。
ターゲットごとに構成を変える
ストーリー設計を意識する
数値や実績で信頼性を補強する
採用ピッチ資料はブランディングと広報の両立ができる手段として、近年注目されています。特に、転職を考え始めたばかりの層や受動的な候補者に効果的です。
採用動画は、文字や写真だけでは伝わりにくいリアルな魅力を、短時間で候補者に印象付けられるチャネルです。動画は視覚と聴覚を刺激して情報を伝えられるため、職場の雰囲気を感覚的に理解してもらいやすくなります。
採用段階に合わせて、複数のフォーマットを活用すると効果的です。
認知段階:15〜30秒のショート動画
興味段階:3分前後のストーリー仕立ての動画
応募段階:社員紹介や選考案内の説明動画
特にZ世代や若年層は、動画を活用した訴求が有効です。オンラインでの採用が浸透してきた現在、動画はブランディングに欠かせないツールとして注目を集めています。
オウンドメディアは、採用ブランディングを長期的に強化するための有効なチャネルです。自社のプラットフォームで運用するため、資産として積み上げられます。
オウンドメディアの運用ポイントは、以下のとおりです。
認知・共感・応募の目的を明確にしてコンテンツ設計する
最低でも月1〜2本の定期更新を継続する
SNSや採用サイトとの連携で情報導線を作る
オウンドメディアは検索経由で潜在層にもアプローチでき、広告に頼らず長期的にブランディングを維持できる点が強みです。
SNSは多くの人が日常的に利用するプラットフォームであり、企業は候補者とフラットに接点を持てる場です。候補者は求人サイトよりも先にSNSで企業を調べる傾向があり、採用ブランディングの起点となるツールといえます。
SNSはターゲットに合わせたプラットフォーム選定が重要です。
Instagram:ビジュアルで企業の雰囲気を伝える
TikTok:若年層への認知拡大
LinkedIn:専門職や管理職層へのブランディング
SNSは広報としてだけでなく、採用体験を設計する重要なチャネルです。
リクナビやマイナビのポータルサイトはチャネルが多様化しているとはいえ、依然として母集団形成の軸といえるチャネルです。多くの候補者は就活ポータルサイトや転職情報サイトを利用するため、認知拡大につながります。
以下は、ブランディングに活かすための、運用ポイントです。
自社の思いや目指す未来をキャッチコピーに入れる
他社との差別化ポイントを明確にする
サイトの機能を最大限に活用する
ポータルサイトで認知を広げつつ、最終的に採用サイトやオウンドメディアに流入させる導線を設計しましょう。
イベントやミートアップは、候補者と直接交流できる貴重なチャネルです。イベント参加者がすぐ応募しなくても、SNSでの拡散や口コミによって認知が広がり、中長期的なブランド資産を形成できます。
イベント・ミートアップにおいて、ブランディング効果を最大化する戦略は次のとおりです。
座談会やワークショップ形式にして交流できる時間にする
コンセプトを企業らしさで統一する
イベント後のフォローと情報導線を設計する
採用ブランディングは単なる世界観の発信だけでなく、体験を通じて候補者の記憶に残りやすい仕組みを作ることも戦略の1つです。

採用ブランディング戦略を外注する場合、費用の目安は30万円以上かかるのが一般的です。採用ブランディングは複数のフェーズに分かれるため、戦略全体を一括で依頼する場合は高額になる傾向があります。一方、動画制作や採用ピッチ資料のように、特定のコンテンツだけを依頼すると、比較的安価な依頼が可能です。
主な費用の目安は、以下のとおりです。
採用ブランド戦略設計:20万円〜100万円
採用サイト・動画制作:20万円〜200万円
採用ピッチ資料作成:1万円〜50万円
SNS運用代行・記事制作:10万円〜30万円
外注を検討する際は依頼する範囲を明確にし、短期施策ではなく長期的な投資として計画を立てることが重要です。

採用ブランディング戦略を外注する場合は、自社の悩みに適した外注先を選定することで、成果を得られやすくなります。
ここでは、採用ブランディング戦略を外注する際のポイントを解説します。
採用ブランディング戦略の外注先は、金額の安さではなく成果とのバランスで判断することが重要です。ブランディングは長期的な戦略のため、投資の妥当性を数値で把握することが欠かせません。
コストパフォーマンスを判断するステップは以下のとおりです。
成果指標(KPI)の設定
自社の過去データから投資効率を試算する
優先的に投資する領域を決める
人事担当者は施策をデータで判断することで、より戦略的にブランディングを行えます。
採用ブランディングの外注先を選ぶ際は、担当者の採用・人事領域に特化した知見があるか確認しましょう。企業は提案書や打ち合わせのなかで、担当者の理解度や設計力を見極めることが大切です
意識するポイントは、以下のとおりです。
自社の採用課題を正確に捉えられる
採用フェーズに沿って提案してもらえる
成果指標を明確にしている
他社事例やトレンドを踏まえている
担当者が人事の課題や候補者の心理を理解していると、戦略の方向性やメッセージ設計の質が高まります。
人事担当者は外注をスムーズに進めるために、見積もりに必要な情報の整理が欠かせません。依頼の目的や範囲を明確にすることで提案内容の質が上がり、費用の妥当性も判断しやすくなります。
以下は、明確にしておくべき主な情報です。
予算
依頼範囲
目的・ゴール
社内で使えるリソース
想定のスケジュール
すでに使用しているチャネル
自社の現状把握は費用の比較が正確にできるため、満足度の高い外注先との契約につながります。
採用ブランディング戦略は短期的な求人施策とは異なり、理念や強みを確立して候補者から選ばれる企業になるための取り組みです。戦略の構築により、応募数の増加や採用コストの削減、従業員エンゲージメントの向上といった効果を得られます。
社内だけで設計が難しい場合は、採用ブランディング専門会社の支援を受ける選択肢もあります。自社理解を深めたうえで、適切な範囲で依頼することがポイントです。
採用戦略を立てるのが難しい、ノウハウがないという場合はプロへ相談しましょう。採用戦略が得意なアズライトなら課題解決に役立ちます。

この記事の監修者
株式会社アズライト 佐川稔
株式会社アズライト代表取締役。採用がうまくいかない優良企業を採用できる企業へ改革するために、戦略・運用に特化した採用コンサルティングファーム「株式会社アズライト」を創業。キャリアに悩む方々のために就活・転職相談BAR「とこなつ家」を池袋にて共同経営中。
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