採用手法
採用活動
2026.1.22
この記事の監修者:
株式会社アズライト 佐川稔

「せっかく応募があっても辞退が多い」「内定承諾率が低い」
人材確保がますます難しくなっている昨今、このような悩みを抱えている採用担当者は多いのではないでしょうか。
その原因は、採用活動の効率を示す“採用歩留まりの低下”にあるかもしれません。
歩留まりを管理・改善することは、採用成功率を劇的に上げる鍵です。実際に、応募から内定承諾までの無駄な隙間を徹底的に減らすことで、採用の質と効率の両立を実現した企業の事例は多数あります。
本記事では、「採用歩留まりとは何か?」という基礎から、平均値、低下する原因、そしてプロセスごとの具体的な改善方法までを徹底解説します。

採用活動における「歩留まり(ぶどまり)」とは、採用プロセスの各段階において、次のステップに進んだ候補者の割合を示す指標です。
この歩留まりを確認することで、どの選考段階で候補者が離脱しやすいのか、あるいは企業側が設定した基準に対して通過率が適切かを定量的に把握できます。そして、この割合を数値化したものが「採用歩留まり率」です。
採用歩留まり率が高ければ高いほど、選考過程における候補者の離脱(辞退)や、基準に満たない不合格者が少ないことを意味します。
これは、採用活動が極めて効率的であり、ターゲットとする優秀な人材を計画通りに獲得できている状態と言えます。

採用歩留まり率を算出するための基本的な計算方法は以下の通りです。
通過した人数 ÷ 開始時の人数 × 100 =採用歩留まり率(%)例えば、書類選考時に100名の応募があり、そのうち30名が通過して次のステップに進んだ場合、書類選考の歩留まり率は以下のように計算されます。
30名 ÷ 100名 × 100 = 30%同様に、採用プロセスの各フェーズ(一次面接、二次面接、内定など)において、その段階の開始時の人数と通過した人数を用いることで、どの段階で候補者が多く離脱しているかを正確に把握できます。
特に、内定を出した人数(開始時の人数)に対して、実際に入社した人数(通過した人数)を割って算出する「内定承諾率(内定→入社)」は、採用目標達成に直結する重要指標です。

採用歩留まり率の平均値は、採用時期(新卒・中途)、業界、職種(技術系・営業系など)、企業規模によって大きく変動するため、全国一律の平均値を示すのは困難です。
しかし、一般的に多くの企業で見られる傾向として、以下の数値が目安とされることがあります。
フェーズ | 新卒採用の目安 | 中途採用の目安 |
|---|---|---|
書類選考通過率 | 48.5% | ― |
面接通過率 | 33.1% | 63.2% |
内定承諾(入社率) | 54.0% | 91.2% |
上記の表を見ると、内定承諾(入社)率において、中途採用が新卒採用よりも高い傾向にあることがわかります。
中途採用候補者の場合、転職への目的意識が明確であり、早期に入社したいという切迫性が高いためです。

採用歩留まり率が低下している場合、それは採用プロセスのどこかに応募者や内定者の「入社意欲」を削ぐボトルネックが存在していることを示しています。
ここでは、特に歩留まり低下に直結する主要な4つの原因を解説します。
選考スピードの遅さは、歩留まり低下の最も直接的で決定的な原因の一つです。
多くの候補者は、複数社を同時進行で受けている可能性が高いため、企業側の選考や意思決定が遅れると、他社の内定を先に受諾されてしまうリスクが増大します。
スピード競争で競合に負けてしまうと、選考終盤まで残っていた意欲的な候補者でも、容易に他社へ離脱してしまいます。
さらに、選考期間が長引くこと自体が、候補者に「自分への評価が低いのでは?」「この会社は意思決定が遅い、または体制が整っていないのでは?」といった不安や不信感を抱かせ、企業への志望度を低下させる要因にもなりかねません。
迅速な対応は、優秀な人材に対する敬意と熱意を示す、企業姿勢そのものです。
応募者が求人票などで抱いた企業イメージと、面接を通じて知る現実との間に大きなギャップ(乖離)が生じると、歩留まり率は急激に低下します。
求人情報で良い面ばかりを強調しすぎると、面接で業務のリアルな厳しさや企業文化の課題を知った際に、話が違うと不信感を抱かせてしまいます。
例えば、募集要項の華やかな内容に対し、面接で「実際は地味な雑務が多い」「恒常的に残業が多い」といった事実が明らかになるケースです。
また、面接官によって説明内容や評価基準がバラバラだと、企業に対する信頼性が揺らぎます。特に、仕事内容や待遇といった根幹に関わる要素で乖離が生じると、内定オファーに対する期待値が下がり、辞退につながります。
選考中の「待ち時間」や内定後の期間における企業側のフォロー体制が手薄な場合、候補者は企業との心理的な距離を感じて辞退しやすくなります。
内定を出した後、数ヶ月間連絡がない、あるいは質問への回答が遅いといった状況では、候補者は「自分は大切にされていない」と感じ、不安が募ります。
ここで重要なのは、候補者一人ひとりのフォローを徹底し、「候補者が価値を感じる体験(採用CX)」を提供することです。
採用CXに注力し真摯に向き合えば、内定承諾率の向上だけでなく、たとえ不採用となった場合でも、自社のファン獲得や企業イメージ向上につながります。
企業側がコントロールしきれないネガティブな情報が、候補者の入社意欲を大きく削ぐ決定打となることがあります。
近年、候補者は第三者のリアルな声を重視し、意思決定を行う傾向が強まっています。具体的には、転職口コミサイトやSNSなどに書き込まれた「人間関係が悪い」「給与が上がらない」といった情報を選考中に見て、不安を感じて辞退するケースです。
また、企業の将来性や経営の不安定さへの懸念、あるいは単純な知名度の低さなどが原因で、内定後に家族や友人といった周囲から反対され、辞退に至ることも少なくありません。
特に成長途上の企業では、この「周囲の意見による辞退」が顕著に見られます。

採用歩留まり率を改善するためには、採用プロセスのどの段階で候補者の離脱が起きやすいのかを理解することが重要です。
ここでは、特に注意すべき3つの場面と、それぞれの潜在的な課題を解説します。
書類選考通過から面接参加までの期間は、「行動のハードル」が高くなる最初の関門であり、最も歩留まり率が低下しやすいタイミングです。
書類選考を通過した喜びがあっても、その後の面接日程調整が煩雑だったり、企業からの連絡が遅れたりすると、候補者は熱意を失い、他社選考を優先し始めます。
また、面接という心理的なハードルが一気に高くなるのもこの段階の特徴です。候補者が「本当にこの会社に行くべきか」といった迷いや緊張感から、辞退が発生しやすくなります。
この期間に企業からのフォローや具体的な情報提供がないと、候補者の熱は冷めてしまい、そのまま離脱につながります。
面接〜内定に至る段階での歩留まり低下は、「面接体験の質」と「ミスマッチの顕在化」の課題が主な原因です。
候補者の入社意欲は、面接官の態度や対応に大きく左右されます。面接官が高圧的であったり、時間にルーズといった不適切な対応を取ると、「この人たちと一緒に働く未来」を描けなくなり、企業への信頼は揺らぎ、辞退につながってしまいます。
また、面接を通じて、求人情報では語られなかった業務のリアルな課題や厳しい労働環境が明らかになる瞬間があるものです。
そこで「想像していた仕事と違う」とミスマッチを感じれば、入社への意欲を失い、自ら選考辞退を決断する候補者も出てきます。
内定から内定承諾までの期間は、辞退が最も集中しやすい場面であり、採用目標達成の鍵を握る重要な局面です。この段階での離脱は、それまでの採用コストを無駄にしてしまいます。
内定を辞退する主な原因は、内定者フォローの不足です。懇親会や社員面談、情報提供などが不十分だと、候補者は「放置されている」と感じ、入社への不安が解消されません。
また、給与やポジションといったオファー条件の不満も辞退に直結します。提示条件が期待値や競合他社を下回ると、容易に流出します。さらに、ネガティブな情報によって不安が増幅され、最終的な辞退に至るケースも少なくありません。

採用歩留まり率を改善するためには、特定の段階だけでなく、採用プロセス全体を見直し、候補者体験(CX)の質を高めることが重要です。
ここでは、前述した「低下しやすい原因と場面」を踏まえ、効果的な6つの改善策を解説します。
選考スピードの遅れは優秀な人材の流出に直結するため、まずはプロセス全体のリードタイムを徹底的に短縮することが不可欠です。
具体的には、書類選考や面接など選考ステップを見直し、本当に必要なプロセスだけに絞り込む必要があります。スピードを担保するために、企業側で明確な推奨スケジュールを設定しましょう。
例えば、書類選考結果は3日以内、面接結果通知は翌日、面接回数は2回までとし、全体選考期間を2〜3週間に収めることを目指します。
また、候補者を待たせないために、採用管理システム(ATS)を活用して日程調整の迅速化を図り、急ぎの場合はオンライン面接の活用も有効です。迅速な対応を心掛けることで、辞退リスクを大幅に低減できます。
初期段階での離脱や選考途中でのミスマッチを未然に防ぐため、募集情報の「透明性」と「正確性」を高める必要があります。
求人票や採用サイトにおいて、仕事の魅力だけでなく、業務のリアルな課題や大変さ、残業時間といったネガティブ情報も隠さず開示しましょう。これにより、入社後のギャップを感じる候補者を減らすことができます。
実態と異なる情報発信は、歩留まりの低下を招くだけでなく、入社後の早期離職にもつながるため、特に注意が必要です。
同時に、自社が求める人物像(ペルソナ)を明確にし、その人物に響くメッセージを打ち出すことも重要です。ターゲットを明確にすることで母集団の質が向上し、結果として選考通過率が上がり、採用活動全体の効率化につながります。
採用活動において、候補者側の都合を優先し、ストレスを感じさせない選考体験を提供することが、離脱を防ぐ上で極めて重要です。
まず、選考への心理的ハードルを下げるために、正式な選考前のカジュアル面談を取り入れましょう。これにより、候補者はプレッシャーを感じることなく、企業を深く知る機会を得やすくなります。
また、面接方法を柔軟にすることも重要です。対面だけでなく、オンラインや、多忙な優秀な候補者の都合を考慮した夜間・休日面接など、参加しやすい選択肢を提供しましょう。
これにより、参加機会を逃さず、面接キャンセルや辞退を減らせます。日程調整においても、迅速な対応を可能にするために、SNSを利用することも有効な手段です。
選考を通じて候補者の入社意欲(志望度)を持続的に高めるための個別的な動機付けは、特に選考終盤や内定後の離脱を防ぐ上で欠かせません。
まず、面接の際に、単に評価するだけでなく、候補者の魅力や期待している点を具体的に伝え、企業からの評価と熱意を明確に示しましょう。一方的な選考ではなく、相互理解の場とすることで、企業への愛着を育みます。
また、現場の社員とのカジュアル面談やオフィス見学の機会を設け、職場の雰囲気や働くイメージを具体化してもらうことも有効です。これにより、候補者自身が「この人たちと働きたい」「この会社で自分のキャリアを実現したい」という内発的な動機を強化できます。
選考中および内定後の「情報不足」と「孤独感」は、辞退の大きな原因です。これを防ぐため、企業と候補者とのつながりを維持する体制を構築します。
まず、内定者フォローにおいては、内定者専用のSNSグループやメールマガジンなど、情報共有と交流のためのツールを提供し、企業との接点を定期的に持ちましょう。また、人事担当者からの定期的な進捗確認や内定者懇親会の実施は、入社への不安を和らげます。
特に重要なのは、不安の個別解消です。内定者からの質問や懸念に対して、迅速かつ個別に対応する担当者(メンターやバディ)を配置し、家族の反対や現職への不安といったデリケートな問題にも真摯に対応することが、最終的な内定承諾率を大きく左右します。
選考体験の質を向上させることは、歩留まり改善の土台となります。そのため、面接官のスキルと意識を統一するための育成が不可欠です。
面接官には、単に評価基準を統一するだけでなく、応募者への「動機付け」と「企業理解を深める場を提供する」という役割を再認識させるトレーニングを実施しましょう。
高圧的な態度や時間にルーズな対応は離脱に直結することを周知し、全ての面接官に候補者を「顧客」として扱う採用CXの意識を徹底させます。
また、候補者からの面接体験に関するアンケートを実施し、その結果を面接官にフィードバックする仕組みも重要です。これにより、面接官が自身の対応を客観的に把握でき、継続的な質の向上を促せます。
採用歩留まり率の低迷は、優秀な人材の流出とコストの無駄遣いにつながる深刻な危機です。特に内定辞退が増えるほど、費やした時間と費用が無駄になってしまいます。
この危機を脱するためには、「なぜ辞退されたのか?」を徹底的に分析し、具体的な改善行動を起こすことが不可欠です。本記事で解説した採用フローの短期化、情報公開の透明化、そして徹底した候補者フォローは、今すぐ着手できる重要な対策です。
採用成功は、一つひとつの歩留まりを改善し、効率を最大化することにかかっています。この記事を参考に、採用危機を回避するための行動を直ちに実行しましょう。

この記事の監修者
株式会社アズライト 佐川稔
株式会社アズライト代表取締役。採用がうまくいかない優良企業を採用できる企業へ改革するために、戦略・運用に特化した採用コンサルティングファーム「株式会社アズライト」を創業。キャリアに悩む方々のために就活・転職相談BAR「とこなつ家」を池袋にて共同経営中。
関連記事