採用戦略
採用戦略
2026.1.18
この記事の監修者:
株式会社アズライト 佐川稔

採用活動を行う中で、「どのように戦略を立てれば成果が出るのか」「効果的な分析方法がわからない」と感じる担当者は少なくありません。
採用市場が複雑化し、求職者の価値観が多様化する今、感覚的な判断だけでは優秀な人材を確保することは難しくなっています。
そこで有効なのが、採用戦略フレームワークの活用です。フレームワークを使えば、自社の強みや課題を整理し、採用活動の全体像を客観的に把握できます。
本記事では、採用戦略の立て方を体系的に学びたい方に向けて、実務に活かせるフレームワークとその活用ポイントをわかりやすく解説します。

採用戦略フレームワークとは、企業が効率的かつ計画的に採用活動を進めるための「現状分析」「課題整理」「施策立案」を体系化した思考手法です。
採用市場の競争は年々激化しており、経験や勘に依存した採用活動では成果の安定化が難しい状況です。こうした背景を踏まえ、多くの企業が論理的で客観的な判断軸としてフレームワークを導入しています。
代表的な例として、採用ターゲットを明確化する「ペルソナ設定」、市場における自社の立ち位置を整理する「STP分析」、採用プロセスを可視化する「採用ファネル」などがあります。
各手法の活用により、属人的な判断から脱却し、再現性の高い戦略的な採用活動へと発展させることが可能です。

採用戦略を策定するうえでまず重視すべきは、「誰を採用するか」というターゲットの明確化です。ターゲット分析に有効なフレームワークを活用すれば、自社の求める人材像を可視化し、戦略的にアプローチできます。
ここでは主要な6つの手法を紹介します。
ペルソナ(理想的な候補者像)設定とは、自社が採用したい人物像を詳細に描く手法です。年齢・性格・スキル・価値観・キャリア志向などを具体的に設定し、現実的な人物像として構築します。
設定したペルソナを分析することで、求人票や採用サイト、面接評価の一貫性を保てるだけでなく、訴求メッセージの精度も高まり、採用後の定着率向上にも貢献します。
ペルソナを具体化することで、企業が「誰に・どのような魅力を伝えるべきか」を明確にでき、採用戦略立案時の指針がより確実になります。
3C分析は、3つの観点から採用環境を整理するフレームワークです。
▼3C分析の構成要素
・「Company(自社)」
・「Competitor(競合)」
・「Customer(求職者)」
自社の強みや弱みを明確にし、競合企業の採用手法や訴求ポイントを把握することで、差別化の方向性を見出せます。
また、求職者がどのような価値を求めているかを理解すると、採用メッセージや求人内容をより的確に設計できます。
自社ならではの採用価値提案(EVP)を確立することで、競争の激しい市場で「選ばれる企業」への基盤を築けます。
4C分析は、3C分析を求職者視点に発展させた手法であり、以下の4つの要素で構成されています。
▼4C分析の構成要素
・「Customer Value(価値)」
・「Cost(コスト)
・「Convenience(利便性)」
・「Communication(コミュニケーション)」
求職者が感じる価値やコスト(転職リスク・時間的負担など)を的確に把握することで、より効果的かつ再現性の高い採用メッセージを設計可能です。
SWOT分析は、企業の採用戦略を検討する際に、自社の採用環境を内外の視点から体系的に整理できる有効な手法です。
▼SWOT分析の構成要素
・「Strength(強み)」
・「Weakness(弱み)」
・「Opportunity(機会)」
・「Threat(脅威)」
内部要因では、採用ブランド力・報酬制度・教育体制・社内文化などを客観的に評価し、外部要因では、業界動向や労働市場の変化、競合企業の採用活動を分析します。
分析結果をもとに、採用活動における強みを最大限に発揮し、改善すべき課題の明確化が可能です。
STP分析は、採用市場を職種・スキル・価値観・経験年数などの観点から分類し、重点的に採用すべき人材層を特定する手法で、次の3段階で構成されます。
▼STP分析の構成要素
・「Segmentation(市場の細分化)」
・「Targeting(ターゲット選定)」
・「Positioning(自社の立ち位置)」
企業として提示できる魅力や提供価値を明確化し、対象層に最も適したメッセージ設計とチャネル戦略を構築します。
競合が激化する市場環境においては、STP分析の活用によって自社の採用ポジションを客観的かつ精緻に定義でき、採用戦略全体の一貫性と実効性を高めるとともに、長期的な人材確保の基盤を形成することが可能です。
PEST分析は、4つの要素を基に外部環境を多角的に分析するフレームワークです。
要素 | 整理する内容 |
|---|---|
Politics(政治) | 労働法改正や雇用政策の動向 |
Economy(経済) | 景気の変化や賃金水準の推移 |
Society(社会) | 価値観の多様化や働き方改革の進展 |
Technology(技術) | AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の発展状況 |
PEST分析によって採用市場を取り巻くマクロ環境を正確に把握し、外的要因が採用活動へ及ぼす影響を評価できます。

採用戦略を策定するうえでは、効果的に進めるためのプロセス設計についても着目しなければなりません。。
ここでは、プロセス設計に焦点を当て、候補者の行動を分析・最適化できる4つのフレームワークについて詳しく紹介します。
採用ファネルは、候補者が「認知」から「内定・入社」に至るまでの流れを段階的に整理し、どの段階で離脱が発生しているかを可視化するフレームワークです。
採用戦略の立て方を具体化するうえで欠かせない分析手法であり、新卒採用戦略の精度向上にも大きく貢献します。
主なフェーズ
フェーズ | 内容 | 改善のヒント |
|---|---|---|
認知 | 企業や求人を知ってもらう段階 | 採用サイトやSNS発信を強化 |
興味 | 興味・関心を持ってもらう段階 | 魅力的な企業ストーリーを発信 |
応募 | 実際に応募行動を取る段階 | 応募フォームの簡素化や導線改善 |
選考 | 面接・試験を通じて評価される段階 | 選考体験の透明性を高める |
内定・入社 | オファーを受けて入社に至る段階 | 入社前フォローで不安を軽減 |
上記の各段階のデータを分析すれば、どのポイントで改善すべきかを明確にでき、採用効率を高められます。
5A理論とは、フィリップ・コトラーが提唱した顧客行動モデルを採用活動に応用した考え方です。求職者が「企業を知り、好印象を持ち、理解し、応募し、最終的にファンになる」までの流れを整理します。
5Aの流れと採用での意味
フェーズ | 意味 | 採用での活用例 |
|---|---|---|
Aware(認知) | 企業を知る | SNS・求人広告で認知を広げる |
Appeal(好意) | 好印象を持つ | 社員の声やビジョン発信で共感を生む |
Ask(調査) | 詳しく知ろうとする | 採用サイトや説明会で理解を促す |
Act(行動) | 応募・エントリーする | 応募導線をスムーズに整備 |
Advocate(推奨 | 他者に勧める | 内定者・社員が企業の魅力を発信 |
SNS時代では、Advocate(推奨)が次の候補者獲得に大きな影響を与えます。
AIDMAモデルは、求職者が企業を知り、魅力を感じ、行動に移すまでの心理プロセスを段階的に示す考え方です。
AIDMAの流れと採用施策の対応例
段階 | 意味 | 採用での施策例 |
|---|---|---|
Attention(注目) | 企業を知る | 求人広告・SNSで視認性を高める |
Interest(興味) | 関心を持つ | 採用ページ・動画で興味を喚起 |
Desire(欲求) | 「働きたい」と思う | 働く魅力を具体的に提示 |
Memory(記憶) | 記憶に残る | ストーリーブランディングで印象付け |
Action(行動) | 応募・エントリー | 応募フォーム・説明会導線を整備 |
AIDMAモデルを意識することで、「どの段階で心が動くか」を可視化し、効果的な採用マーケティングを設計できます。
TMP (Talent Marketing Process)設計とは、採用活動をマーケティングプロセスとして体系的に捉える考え方です。求職者を“顧客”に見立て、出会いから応募・入社までの流れを戦略的に設計します。
▼TMP設計の4ステップ
①ターゲット定義:求める人材像や採用市場での立ち位置を明確化
②メッセージ設計:ターゲットが共感する価値提案(EVP)を作成
③チャネル選定:求人サイトやSNSなど最適な媒体を選定
④効果測定と改善:応募率・内定承諾率などを分析し、PDCAを回す
TMP設計の導入により、採用を感覚的な活動からデータに基づく仕組みに変えられます。チャネル別の成果を可視化し、メッセージや導線を継続的に改善することで、採用効果を持続的に高めることが可能です。

採用計画と運用の両面で活用できるフレームワークを理解することは、戦略的な採用活動の基盤づくりに欠かせません。
ここでは、目標設定に役立つ「SMART目標設定」と、改善を継続する「PDCAサイクル」について解説します。
SMART目標設定とは、採用計画を実行可能な形に落とし込むための考え方です。
以下の5要素を押さえることで、「何を・どこまで・いつまでに」達成するのかを明確にできます。
要素 | 意味 |
|---|---|
Specific | 具体的であること |
Measurable | 測定可能であること |
Achievable | 実現可能であること |
Relevant | 目的と関連していること |
Time-boundime-bound | 期限が設定されていること |
悪い例:「良い人材を採用したい」
良い例:「3か月以内に内定承諾率を10%向上させる」
例のように設定することで、チーム全体で共通の目標を共有し、評価・改善の基準を明確化できます。
PDCAサイクルとは、業務改善の基本となる手法で、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4段階を繰り返します。
段階 | 内容 | 採用活動での具体例 |
|---|---|---|
Plan(計画) | 目標やKPI(重要業績評価指標)を設定する | 「応募数を月50件にする」など |
Do(実行) | 計画に基づいて施策を実施する | 求人媒体の見直し、スカウト強化など |
Check(評価) | データを分析して結果を確認する | 応募率・内定率・離職率の測定 |
Action(改善) | 改善策を立案し、次のサイクルに反映する | 面接フローや訴求内容の修正 |
PDCAサイクルを継続的に回すことで、単発的な採用施策に終わらず、採用の質とスピードの両立を実現できます。

採用戦略のフレームワークは、状況整理や課題発見に役立つ便利なツールですが、形だけをなぞるのではなく、目的を明確にして柔軟に運用することが重要です。
ここでは、効果的にフレームワークを活用するための4つのポイントを解説します。
フレームワークは使うこと自体が目的ではなく、採用課題を明確にし、最適な戦略を導き出すための「手段」です。形式にとらわれて分析するだけでは、現場の課題解決には結び付きません。
活用のためには、フレームワークを通じて自社の採用状況や課題を客観的に整理し、次の施策に反映させる姿勢が求められます。
新卒採用戦略の立案や中途採用を成功させるためには、ツールを使うことそのものよりも、得られた示唆を戦略的意思決定にどう活かすかが重要です。
フレームワークは万能ではなく、企業の規模・採用職種・採用チャネルによって適した使い方が異なります。
たとえばSWOT分析や3C分析などは基本構造が決まっていますが、自社の現状に合わせて項目や切り口をカスタマイズすることが効果的です。
分析結果をそのまま受け取るのではなく、現場の声や最新データを取り入れながら柔軟に修正することで、実践的で再現性の高い採用戦略へと発展します。
採用戦略を設計する際、企業側の課題や採用目標だけに焦点を当てると、求職者の共感を得られない施策になりがちです。
ペルソナ設定やSTP分析などのフレームワークは、求職者の価値観や意思決定の流れを理解するために活用すべきです。 自社の魅力を伝えるだけでなく、求職者が何を求め、どのように感じ、どの基準で応募・選考を判断するのかという視点を中心に設計しましょう。
採用市場や自社の状況は常に変化しています。経済動向や労働環境の変化、新しい採用チャネルの登場などにより、過去の分析結果が現在では通用しない場合もあります。
フレームワークは一度作って終わりではなく、定期的に見直し、データや市場トレンドを反映させることが重要です。継続的なアップデートにより、採用活動は環境変化に対応し、長期的な成果を生み出す戦略へと進化します。
人材ニーズの多様化や採用競争の激化が進む中、古い戦略のままでは機会損失が生じます。採用戦略セミナーなどを通じて最新の知見を取り入れ、フレームワークを組織戦略の一部として再構築する姿勢が欠かせません。
採用戦略フレームワークは、変化の激しい採用市場において自社の現状を整理し、効果的な戦略を立てるための重要な手法です。
SWOT分析や3C分析で課題を明確化し、採用ファネルやPDCAサイクルで改善を重ねることで、実行力の高い採用活動が可能になります。
ただし、フレームワークの活用は目的ではなく、常に「何を明らかにし、どの成果を目指すのか」を意識することが重要です。採用環境の変化に応じてデータを見直し、柔軟に更新する姿勢が欠かせません。
採用戦略を立てるのが難しい、ノウハウがないという場合はプロへ相談しましょう。採用戦略が得意なアズライトなら課題解決に役立ちます。

この記事の監修者
株式会社アズライト 佐川稔
株式会社アズライト代表取締役。採用がうまくいかない優良企業を採用できる企業へ改革するために、戦略・運用に特化した採用コンサルティングファーム「株式会社アズライト」を創業。キャリアに悩む方々のために就活・転職相談BAR「とこなつ家」を池袋にて共同経営中。
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