「初めて面接官を任されたけれど、どう進めればいいのか分からない」そんな不安を抱える方は少なくありません。面接は単なる質問の場ではなく、応募者の可能性を見極め、同時に企業の魅力を伝える重要なプロセスです。実際、面接官の対応ひとつで応募者の印象や採用の成否が大きく変わります。経験や勘だけに頼った面接では、優秀な人材を逃すリスクも高まります。さらに、面接官自身の振る舞いは「企業の顔」として見られるため、信頼感や誠実さも欠かせません。本記事では、面接官として押さえておくべき正しいやり方と、採用成功を左右する「面接力」を高める実践的ポイントを解説します。面接官の基本的なやり方面接官の基本的なやり方は、面接の進め方を理解し、応募者に安心感を与えながら情報を引き出すことです。挨拶から事務連絡までの流れを押さえ、公平で誠実な対応と信頼関係の構築を意識しましょう。ここでは、それぞれの段階で面接官が意識すべきポイントを順に解説します。挨拶・自己紹介最初の印象を左右するのが「挨拶と自己紹介」です。丁寧な言葉遣いと落ち着いた態度で、安心感のある雰囲気をつくりましょう。たとえば、「本日はお越しいただきありがとうございます。採用担当の◯◯です」と簡潔に伝えるだけで十分です。自己紹介は長くなりすぎず、役職や担当範囲を述べる程度にとどめます。応募者は緊張していることが多いため、笑顔と穏やかな口調を意識すると、面接全体がスムーズに進行します。また、姿勢や目線にも注意を払いましょう。視線を合わせて話すことで、誠実な印象を与え、応募者の不安を軽減できます。アイスブレイクアイスブレイクは、応募者の緊張をほぐす重要なステップです。ここで自然な会話ができると、その後の質問にもリラックスして答えやすくなります。たとえば、「今日は来社までスムーズでしたか？」といった軽い話題から始めると効果的です。無理に盛り上げようとせず、応募者のペースに合わせましょう。目的は「安心して本来の力を発揮してもらうこと」です。穏やかな空気づくりが、より正確な評価につながります。さらに、天気や時事など誰でも答えやすい話題を選ぶとよいでしょう。短い時間でも信頼感を築けます。企業説明面接官が行う企業説明は、応募者に会社を正しく理解してもらうための重要な時間です。「事業内容」「組織体制」「募集ポジションの役割」を簡潔に伝え、入社後の働き方を具体的にイメージさせましょう。やり方のポイントは、誇張やあいまいな説明を避けることです。特に中途採用では即戦力を求めるため、入社後のミスマッチを防ぐには「会社の現状」と「今後の方向性」を正確に伝える必要があります。また、会社の理念やチームの雰囲気を紹介し、数字や事例を交えると理解度が高まります。面接官の説明次第で、「ここで働きたい」という意欲を引き出すことが可能です。質問面接の中心は「質問」です。目的は応募者のスキルや価値観、職場との相性を見極めることです。質問は「経歴」「志望動機」「今後のキャリア」などを段階的に行いましょう。また、「〜を選んだ理由」など、行動の背景を尋ねる質問を交えると、応募者の考え方を深く理解できます。個人情報や差別的な内容には触れないよう注意が必要です。公平で一貫した質問を通じて、適切な評価を行いましょう。さらに、質問の意図を明確にしておくと、面接官同士で評価基準を共有しやすくなります。評価後のフィードバックもスムーズになり、採用判断の精度が高まります。逆質問逆質問は、応募者が企業理解を深める大切な機会です。面接官にとっても、質問内容から志望度や準備の度合いを確認できる場になります。「入社後の研修体制について知りたいです」といった質問には、丁寧に回答して安心感を与えましょう。逆質問が少ない場合でも、無理に引き出す必要はありません。最後に「何かご不明点はありますか？」と一言添えるだけで十分です。また、逆質問を通して応募者の価値観を知ることで、配属先との相性を判断する材料にもなります。さらに、質問の内容や姿勢から仕事への意欲や理解度も見極められるため、採用判断の参考になります。事務事項の連絡最後に、今後の流れや事務的な案内を伝えます。「結果は◯日以内にメールでご連絡します」「交通費は本日中に精算いたします」など、具体的に説明して応募者の不安を和らげましょう。この場面での対応が雑だと、企業全体の印象を損なうおそれがあります。面接の締めくくりこそ丁寧に行い、「本日はありがとうございました」と感謝を伝えて終えるのが理想です。さらに、退室の誘導や次の手続きもスムーズに案内し、最後まで誠実な対応を心がけましょう。細部まで気を配る姿勢が企業の信頼感につながり、応募者の印象にも残ります。面接官が担う役割面接官の役割は主に2つあります。・応募者を「見極める」・会社の「魅力を伝える」どちらも採用の成否を左右する重要なポイントです。これらの視点を意識することで、応募者の本質を理解し、納得度の高い面接が実現します。ここでは面接官の2つの役割について解説します。応募者の「見極め」採用面接で面接官に求められるのは、人材を正確に「見抜く」ことです。目的は、応募者が自社の文化や業務内容に適しているかを判断することです。そのためには、スキルや経歴だけでなく、考え方や価値観、将来性にも目を向ける必要があります。人材を見抜くには、質問の工夫が欠かせません。たとえば「これまでの経験から学んだこと」や「困難をどう乗り越えたか」を尋ねることで、応募者の行動特性や判断軸を把握できます。表面的な回答にとどまらず、言葉の背景にある姿勢を読み取ることが大切です。適切に見抜くことで、採用後のミスマッチを防ぎ、定着率向上にもつながります。会社の「魅力付け」採用面接で重要なのが、応募者に自社の魅力を伝える「魅力付け」です。優秀な人材ほど複数の企業からオファーを受けるため、面接官は会社の強みや働きやすさを具体的に伝え、「ここで働きたい」と感じてもらうことが欠かせません。たとえば、求人票では伝わらない現場の雰囲気やチームの実例、成長支援制度を紹介したり、「働くうえで重視していること」などを質問すべきことに加えたりすると効果的です。面接官は企業の代表として、誠実で前向きなコミュニケーションを意識することが、信頼される採用面接につながります。面接官が行うべき事前準備・やり方面接の成功には、事前準備が欠かせません。面接官は応募者を評価する立場であると同時に、企業の顔として信頼を与える存在です。準備が不十分だと進行がぎこちなくなり、応募者の力を十分に引き出せません。ここでは、面接前に行うべき準備の手順を6つに分けて解説します。求める人物像・評価基準を明確にする最初に行うべきは、「どんな人を採用したいのか」を明確にすることです。目的があいまいなまま面接を行うと、判断基準がブレてしまい、ミスマッチを招くおそれがあります。職種に求められるスキルや経験だけでなく、配属予定先の部署や会社の雰囲気に合うかどうかも重要です。労働条件との相性、過去の経歴やスキル、保有資格、さらには本人の人柄までを総合的に想定しておきましょう。評価基準を事前に言語化し、複数の面接官で共有することで、一貫性のある採用判断が可能になります。応募者に合わせて質問内容を精査する次に行うべきは、応募者ごとに質問内容を整理することです。全員に共通の質問をすることも大切ですが、職務経歴書や履歴書を丁寧に読み込み、応募者の経験や強みに合わせて質問を調整することで、より深い理解が得られます。たとえば、過去の実績や課題解決のエピソードに焦点を当てると、仕事への姿勢や思考プロセスが見えやすくなります。さらに、応募動機や転職理由などを掘り下げることで、価値観や長期的な志向も把握可能です。質問を入念に準備することで、限られた時間を有効に使い、面接官としての印象も高められます。評価シートを作成する公平で客観的な判断を行うためには、評価シートの作成が欠かせません。評価シートには、スキルや経験、コミュニケーション力、価値観、協調性などの評価項目を設定しましょう。定量的に点数をつけられる形式にすると、感情的な印象に左右されにくくなります。また、複数人で面接を行う場合には、同じフォーマットを用いることで比較しやすくなり、判断の精度を高めることが可能です。さらに、記録を残しておくことで、後日のフィードバックや再検討、次回採用時の改善にも活用でき、採用活動全体の質向上にもつながります。自社の魅力を整理する面接は応募者を評価する場であると同時に、自社をアピールする絶好の機会でもあります。応募者が入社意欲を高められるよう、会社の強みや事業内容、職場環境を明確に整理しておきましょう。特に中途採用では、キャリアアップの支援制度や柔軟な働き方、ワークライフバランスなど、応募者が重視しやすい要素を中心に伝えることが効果的です。さらに、チームの雰囲気や代表の考え方、社内イベントの様子など、求人票では伝わりにくいリアルな情報を具体的に紹介することで、応募者が「ここで働きたい」と感じる確率を高められます。実際の流れに沿って予行演習を行う面接当日の流れを事前に想定し、予行演習を行っておくと安心です。最初の挨拶から質問、逆質問、締めの言葉まで一連の進行を確認しておくことで、当日の緊張や戸惑いを防げます。特に初めて面接官を務める場合は、他の面接官や人事担当者とロールプレイを行い、言葉遣いや所要時間の感覚をつかむとよいでしょう。また、応募者への対応姿勢や目線、声のトーンなども意識して練習すると、より落ち着いた印象を与えられます。質問の切り替え方や間の取り方など、細部を意識して練習することで、スムーズで信頼感のある進行が可能になります。清潔感のある身だしなみに整える最後に、身だしなみの確認も忘れてはいけません。面接官は企業の代表として応募者に会うため、清潔感と信頼感を与える服装が基本です。スーツやジャケットのしわ、髪型、靴の汚れ、香りなど細部まで確認しましょう。特に中途採用の採用面接では、応募者もビジネス感度の高い視点で相手を見ています。時計や筆記用具などの持ち物も整えておくと印象がより良くなります。身だしなみを整えることは、応募者への敬意を示す行為でもあり、第一印象で「信頼できる会社だ」と感じてもらうための大切な準備です。面接官が採用判断を行うためのやり方面接する側が採用判断を行う際は、応募者の回答だけでなく将来の活躍を見据える視点が重要です。質問の仕方や非言語的要素の見極めなど、面接官としてのコツを押さえることが大切です。ここでは、採用判断のポイントについて解説します。質問の回答から将来のパフォーマンスを予測する採用判断では、応募者が過去にどのような行動を取ったかをもとに、将来どのように活躍できるかを予測することが欠かせません。過去の行動にはその人の価値観や仕事への姿勢が反映されるからです。たとえば「これまで最も努力した経験は？」という質問に対し、挑戦の過程や課題解決の工夫を具体的に語れる応募者は、入社後も主体的に行動できる可能性が高いといえます。回答を聞くときは「何をしたか」だけでなく、「なぜそうしたのか」「その結果何を得たのか」という思考の流れを確認し、行動特性を丁寧に把握することが大切です。質問の回答だけでなく表現方法にも注目する応募者の言葉づかいや話し方には、性格やコミュニケーション能力が表れます。回答の内容が優れていても、言葉の選び方や態度に配慮が欠けていれば、職場での協調性に懸念が残ります。たとえば、自分の成果を話す際に他者への感謝を添えられる人は、チームでの連携を大切にできるタイプと判断できます。また、質問に対して焦らず論理的に答えられるか、表情や姿勢が前向きかどうかなど、非言語的な要素も合わせて観察することが重要です。回答内容と表現方法の両面を評価することで、より的確な採用判断が可能になります。面接を成功させる面接官が行っている面接のやり方面接を成功させるためには、質問内容や進行だけでなく、面接官自身の姿勢や考え方が重要です。優れた面接官は、応募者の本質を見抜く質問力や先入観にとらわれない評価力、そして「企業も見られている」という意識を持っています。ここでは特に重要な3つのやり方を解説します。「なぜ？」という問いを投げかける面接では、応募者の発言に対して「なぜそう思ったのか」と掘り下げて尋ねることが効果的です。「なぜ」という問いは応募者の思考プロセスや価値観を深く引き出せるからです。たとえば「前職を辞めた理由」や「仕事で工夫した点」に対し、「なぜそうしたのか」を尋ねると、行動の背景や意思決定の根拠が見えてきます。表面的な回答にとどまらず、考え方や行動の一貫性、問題解決への姿勢を把握できるため、将来のパフォーマンスをより正確に予測できるようになります。バイアスにとらわれず正確に評価する面接では、性別・年齢・話し方などの印象による偏見を排除することが重要です。先入観のまま評価してしまうと、実力を正しく見極められず、採用のミスマッチにつながります。評価は「事実」と「行動」に基づいて行うことが基本です。たとえば、回答内容を評価シートに沿って数値化し、他の面接官と共有することで主観を抑えられます。また、複数の視点を取り入れることで評価の公平性が高まり、判断のばらつきを防ぐことができます。客観的で透明性の高い評価を徹底することが、信頼される面接官へ近づくために重要な姿勢です。企業も「見られている」意識で対応する面接は、応募者が企業を評価する場でもあります。面接官の態度や言葉遣い、説明の丁寧さは応募者の印象を大きく左右します。質問への回答を誠実に行い、相手の話を遮らない姿勢は、企業の真摯さを伝える大切な要素です。また、清潔感のある身だしなみや、わかりやすい言葉での説明も信頼を得るポイントです。応募者は面接を通じて「この会社で働きたいか」を慎重に判断しています。面接官が「採用する側」ではなく「共に働く仲間を迎える立場」として接することで、企業の文化や価値観、働く環境の魅力をより正確に伝えられます。面接官の正しいやり方のまとめ面接を成功に導く面接官は、質問力・評価力・姿勢の3点を磨いています。「なぜ？」という問いで応募者の考え方や価値観を深掘りし、事実と行動に基づいた公平な評価で先入観を排除します。また、面接は企業も見られる場であることを意識し、態度や言葉遣い、説明の丁寧さを徹底することが大切です。これにより採用の質だけでなく、応募者の信頼や企業のブランド価値も高まります。さらに、誠実で一貫した対応は口コミや評判にもつながり、長期的な採用力を強化します。この記事を参考に、面接官としてのスキルを磨き、企業の魅力を最大限に伝える面接を実践してみてください。