「入社後のパフォーマンスを期待したが、思ったほど結果に結びついていない」「面接官の感覚に頼っていて、評価がばらつく」このような悩みを抱える人事担当者は少なくありません。一般的な面接は候補者の受け答えや雰囲気を重視してしまい、担当者の感覚的な判断に影響されることがあります。コンピテンシー面接は、これまでの取り組みをもとに入社後のパフォーマンスを予測できる方法です。候補者の学歴や能力だけでは測れない、結果に直結する実行力を判断できる手段として、近年関心が高まっています。本記事では、コンピテンシー面接の概要や一般的な面接との違い、質問パターン、運用までの手順、結果につなげるためのコツを解説します。コンピテンシー面接とはコンピテンシー面接とは候補者のこれまでの取り組みをもとに、入社後のパフォーマンスを予測するための方法です。コンピテンシーという言葉の意味は、優れた成果を上げる人に共通する行動パターンを指します。アメリカの心理学者デイビッド・マクレランドは「学歴や知識だけでは業務遂行力を判断できない」と指摘し、行動に着目した評価の必要性を説きました。この考え方を応用したのが「コンピテンシー面接」であり、担当者は候補者に対し、経験にもとづいた業務への取り組み方を掘り下げます。コンピテンシー面接の特徴は候補者の姿勢や思考プロセス・結果を聞き、能力や知識だけでなく、再現性のあるデータを収集できる点です。優秀な人材に共通する対応力を軸に選考できるため、感覚に頼らない手段として注目を集めています。コンピテンシー面接と従来の面接の違いコンピテンシー面接従来の面接評価の軸客観的担当者の主観質問の内容過去の経験を深堀り一般的で抽象度が高い質問の形式体系立てて進行話の流れに応じた自由形式評価の客観性担当者の感情に影響されにくい担当者の経験や勘に頼りやすいこれまでの面接は候補者の印象や話し方をもとに評価が行われます。一方で、コンピテンシー面接は候補者が取り組んできたことから、客観的に評価できる点が大きな違いです。一般的な面接では、ヒアリング内容や判断軸が担当者によって異なり、評価の捉え方が一致しないことがありました。コンピテンシー面接であれば、活躍している社員の実践傾向をもとに質問が設計されます。コンピテンシー面接は、特に早期離職率の課題を抱える企業にとって、客観的に候補者を見極められるため選考プロセスの最適化が期待できます。コンピテンシー面接の質問例コンピテンシー面接では候補者の過去の取り組みから、能力や価値観の再現性を見極めます。質問の流れは、STAR法を用いた設計が効果的です。以下の質問は、リーダーシップを発揮した経験を掘り下げる場合の例です。要素例S:Situation(状況)メンバーをまとめる立場で進めたプロジェクトを教えてくださいT:Task(課題)チームをまとめるうえで、どんな課題がありましたかA:Action(行動)課題解決に向けて、どんな取り組みをしましたかR:Result(結果)その結果、チームにや実績にどんな変化がありましたかコンピテンシー面接は1つの項目をSTAR法で深堀りして行動の質を測り、いくつか質問を繰り返すことで回答の一貫性を検証できます。STAR面接(行動面接)の詳細はこちら≫コンピテンシー面接を実施するメリット一般的な面接では候補者の印象や話し方が評価に影響し、思ったほど成果が伸びないと感じることも少なくありません。コンピテンシー面接は評価の一貫性を保ち、候補者の活躍が予測しやすくなります。ここからは、コンピテンシー面接を取り入れるメリットを3つ紹介します。入社後の行動・パフォーマンスを予測しやすいコンピテンシー面接では、経験に基づく定性的な情報を候補者から聞き出すことで、実際のパフォーマンスに近い評価ができます。これまでの選考プロセスのように考え方や意欲を聞く面接では、入社後に行動が伴わないことも少なくありません。たとえば、新卒を対象にしたコンピテンシー面接では、アルバイトやゼミ活動、部活動での経験を聞き出します。実務経験がない学生でも、目標達成力や粘り強さ、課題分析力へ直結する取り組みに焦点を当てた評価が可能です。候補者の回答をデータとして蓄積することで、入社後のパフォーマンスを予測する正確性が向上し、ミスマッチを防止できます。評価の一貫性を保てるコンピテンシー面接では、ヒアリング項目と評価の軸をあらかじめ統一するため、担当者ごとの感覚的な判断を減らせます。属人的な判断を避け、すべての候補者を一貫した基準で評価できます。たとえば、課題解決力をチェックするときに、担当者がそれぞれの感覚で判断してしまうと、評価が安定しません。あらかじめ「どんな行動を評価するのか」を明確にし、結果に至るまでのプロセスを5段階で比較できることが大切です。誰が面接しても同じ軸で評価できる仕組みを整え、選考の公平性と信頼性を向上できる点が、コンピテンシー面接の強みです。求職者の本質を見極めやすくなるコンピテンシー面接では候補者の実践内容を深堀りできるため、表面的な印象や言葉に影響されず、根本的な考え方をより正確に読み取れます。一般的な面接では、受け答えが上手な人や印象の良い人が高評価を得やすく、実際の課題解決力や実行力が見抜けないことがありました。コンピテンシー面接は経験に焦点を当て、状況や考え方、行動、得られた結果を時系列で把握します。候補者の回答内容から、思考力や推進力、学習への姿勢が判断できます。候補者の価値観や思考プロセスを掘り下げることで、自社に合う人材を見極められるだけでなく、人員配置やリーダー候補の選抜にも活用可能です。コンピテンシー面接を実施するデメリットコンピテンシー面接は選考の正確性を高める方法ですが、運用に不安を感じる人事担当者も多いのではないでしょうか。実際、コンピテンシー面接ならではの準備や運用方法があるため、社内で体制を整える必要があります。ここからは、コンピテンシー面接を取り入れるデメリットについて解説します。ハイパフォーマー人材モデルの選定・言語化に工数がかかるコンピテンシー面接を取り入れる際は、まず自社で実績を上げている社員の共通点を特定しなければなりません。優秀な社員の行動パターンから、明確なヒアリング項目の設計や評価軸に落とし込むため、人事担当者や責任者の時間と労力がかかります。社内で1つの質問項目を作成すれば良いのではなく、職種や役職ごとの求められる役割に合わせた設計が不可欠です。優秀な人物像を選定するために、ヒアリングやアンケートを活用した定性的な調査が必要で、専門的な知識も求められます。人事部門や現場マネージャーの手間を惜しまず、理想の人物像を明確にすることで、選考の一貫性や信頼性を高められます。定期的なモデルの更新が必要になるコンピテンシー面接で活用する人物像は一度作って終わりではなく、事業方針や組織体制の変化に応じて、定期的な更新が欠かせません。コンピテンシーはあくまで、現時点で実績を出している社員の行動パターンが基準です。新しい事業に関わる人材の確保や、時代の流れに沿って組織文化が変化している場合は、求める行動スタイルも異なります。数年前に設計した人物像のまま活用し続けると、面接の評価軸と実績を出す人材にズレが発生します。人事部門は定期的に改善する仕組みをつくり、選考の質を維持することが大切です。コンピテンシー面接だけでの採用可否判断は難しいコンピテンシー面接において、候補者の実践パターンだけで合否を判定することは適切ではありません。企業は候補者の価値観や将来の成長性といった、コンピテンシー面接では見えにくい要素も総合的に判断する必要があります。選考フェーズごとに、実技テストや適性検査、リファレンスチェックを組み合わせ、より的確に判断できる仕組みづくりが不可欠です。多様な面接方法を用いることで、優秀な人材を見落とすリスクが抑えられます。コンピテンシー面接だけに頼らず、活動全体を俯瞰して優秀な人材を特定するために必要な方法を取り入れることが重要です。コンピテンシー面接導入までの流れコンピテンシー面接のやり方や、準備の仕方が分からないと感じている人事担当者は多いのではないでしょうか。他の面接方法とは異なり、コンピテンシー面接ならではの手順で進めていく必要があります。ここからは、コンピテンシー面接を導入するまでの流れを解説します。活躍している社員の行動特性を分析するまずは社内で実績を出している社員の行動パターンを分析し、目標達成の要因を明確にしましょう。ここでは、効果的なヒアリング項目を設計をするために、優秀な社員の行動や思考、姿勢を明確にするフェーズです。優秀な社員の分析を行う手順は、以下のとおりです。実績が出ている社員を数名選ぶ社員との面談や上司のフィードバックからエピソードを集めるSTAR法を使って結果が出た背景を掘り下げる複数社員の共通点を洗い出す抽出した共通点をリスト化して整理する行動パターンの分析は定性的な情報を可視化し、重視すべき資質や質問作成の正確性を高めるための重要な工程です。重視する行動特性を決定する社員の分析が完了したあとは、自社のビジョンや職種ごとの役割に合った項目を絞り込み、評価の軸となる重視すべき行動パターンを決めましょう。抽出したすべての行動特性を評価するのではなく、事業内容や企業の成長フェーズに合わせて決定することが大切です。行動パターンの決定は、以下のように進めましょう。社員の分析でリストにしたものを行動傾向ごとにグループ化するグループごとに実績との関連性を確認する自社の理念とマッチしているか確認する重要視する項目を決める人事担当者は現場の責任者や経営層とすり合わせながら、設定することが重要です。行動特性ごとの質問を作成する重視する資質を決定したら、それぞれの行動パターンを評価できる質問を作成しましょう。設問の正確性を高めるための要素について、課題解決力を例に挙げて解説します。行動特性を明確に定義する:根本原因を分析して改善策を実行する力行動の定義を細分化する:課題の発見、原因の分析、解決策の実行、結果の検証STAR法をベースに項目を作る:状況・課題・行動・結果フォロー質問を設計する:回答が抽象的だった場合に深堀りするための内容取り組みに対する一貫性や思考の再現性を確かめられるように、1つの項目に対して深堀りすることが欠かせません。明確な評価基準を定める明確な評価項目の設定は、誰が対応しても一貫した判断をするための重要なステップです。担当者が候補者の回答を客観的に比較しやすく、選考の公平性を確保できます。評価項目の設定方法は、次のとおりです。行動特性ごとに評価すべき指標を明確化する実践レベルを5段階で設定する各段階の指標を言語化する明確な軸を定めることで、担当者の感覚に影響されない客観的な合否の決定ができます。人事担当者は決定した軸をデータとして蓄積し、今後の担当者育成や改善に活かしましょう。評価シートを作成する人事担当者は、担当者が候補者の回答を一貫した軸で記録できるよう、評価シートを作成しましょう。評価シートの活用により、担当者全員が同じフォーマットで判断を行えるため、面接の質を保てます。評価シートは、次のような項目を含めると効果的です。候補者氏名・職種・面接日評価軸に設定した行動特性各項目の評価レベル評価理由・メモ欄総合評価・合否判断シートを作成する際のツールはExcelやGoogleスプレッドシートを活用することで、データの共有がスムーズに行えます。面接官に対する研修を行う面接官への研修は、コンピテンシー面接を定着させるために不可欠なステップです。どれだけ優れた聞き方や評価の軸を設計しても、面接官が正しく理解・運用できなければ判断の一貫性を保てません。研修は以下の内容を行いましょう。コンピテンシー面接の目的や評価の考え方を共有する質問の流れをロールプレイ形式で練習するスコアリング演習を行う面接官同士で評価基準のすり合わせるトレーニングを定期的に行うことで、面接官全員が同じ視点で候補者を評価できるようになります。コンピテンシー面接を成功させるためのポイントコンピテンシー面接を効果的に運用できなければ、求める人材の確保にうまくつながりません。コンピテンシーの仕組みを取り入れるだけでなく、面接運用の正確性を高めるための取り組みが不可欠です。ここからは、コンピテンシー面接を結果につなげるためのコツについて紹介します。候補者の第一印象を評価に反映させないコンピテンシー面接では、最初の印象や話し方の上手さといった感覚的な要素を評価に反映させないことが重要です。「ハロー効果」や「初頭効果」と言われる、事実より先に印象で評価を決めてしまうことが心理学でも証明されています。候補者の最初の印象に影響されないための工夫は、次のとおりです。面接序盤では評価項目にない話題を入れる複数の面接官で評価する印象ではなく、観察できる行動を記録する時間を置いて評価する面接官は最初の印象を排除し、実践データに基づいて評価することで、より公平で信頼性の高い決定ができます。候補者の本質を引き出せるような会話を意識するコンピテンシー面接では候補者が安心して話せる雰囲気づくりと、取り組みの背景を引き出すヒアリング設計が重要です。候補者に緊張や警戒心がある状態では、表面的な回答になりやすく、実際の取り組み方や考え方を十分に伝えられません。面接官は候補者との会話で次のことを意識しましょう。冒頭で、考え方や行動を尋ねる内容だと伝える成功と失敗体験をバランスよく聞く結論を急がず、聞く姿勢を一貫する面接官は候補者の回答を引き出すことを意識し、信頼関係を築くことで、価値観や行動スタイルを正確に理解できます。候補者が持っているスキルを自社で活かせるか見極めるコンピテンシー面接では候補者の持つスキルが、自社の業務や文化に適応しているか判断することが大切です。候補者が目標達成した環境や条件を明確に聞き、自社で再現できるかを判断します。面接担当者は以下のような視点で、候補者に問いかけましょう。得意分野を発揮した状況結果よりもプロセスに着目周囲との関わり方業務環境が変わったときの対応方法自社の業務課題を想定した問いかけ面接担当者はスキルの量ではなく再現性に注目し、候補者が自社でどのように活躍できるかを判断することがコツです。全社で連携して進めるコンピテンシー面接は人事部門だけで行わず、経営陣や現場を巻き込み、全社で運用することが大切です。面接設計や評価軸の構築は、実際に結果を出している社員やマネジメントする責任者の知見が欠かせません。各工程で必要な社員は次のとおりです。行動特性の分析:現場マネージャー・結果を出している社員行動特性の決定:現場の責任者・経営層質問作成:現場マネージャー・責任者評価基準:現場の責任者評価シート:人事部門面接官研修:現場マネージャー・責任者コンピテンシー面接は全社で協力しながら進めることで、現場で求めている役割や能力と一致し、候補者のミスマッチを防げます。面接官のスキルアップを図るコンピテンシー面接では、特に担当者一人ひとりの専門性を高めることが不可欠です。ヒアリング力や観察力、候補者が話しやすい雰囲気づくりといった幅広いノウハウがないと、効果的な運用ができません。面接官のスキルを底上げする工夫は、次のとおりです。面接を録画して人事担当者がフィードバックする年次または半期ごとにフォローアップ研修を行う面接評価と入社後の実績をデータにして分析する定期的なデータ分析と振り返り、研修を行うことで、コンピテンシー面接の正確性が上がり、安定して優秀な人材を確保できます。参考記事:面接官トレーニング完全ガイド|目的・メリット・研修方法・身につけるべきスキルまで徹底解説評価基準の見直しを定期的に行うコンピテンシー面接を継続して運用するために、評価項目の定期的な見直しは欠かさず行いましょう。作成当初は完璧に見えても、実際に運用していくと抽象的な評価項目やあいまいな点が見えてくることがあります。評価項目の見直しをただ進めるだけでは目的が薄れてしまうため、次のような工夫が大切です。入社後の実績データを検証に取り入れる見直しは人事部門・現場責任者・面接官で行う各行動パターンの定義を具体化し直す見直しは人事評価や活動サイクルに合わせて1年に1回行い、組織変化が大きい時期は半年に1回のペースで簡易チェックを行うと効果的です。コンピテンシー面接のまとめコンピテンシー面接は、候補者の経験から将来のパフォーマンスを予測できる効果的な手段です。これまでの選考プロセスのように担当者の印象や感覚に影響されず、活躍社員の行動パターンをもとに評価できるため、選考の公平性と正確性を高められます。ただし、コンピテンシー面接はヒアリング項目や評価軸の構築、面接を担当する社員の育成が必要です。社内の運用体制を整え、継続的に改善を重ねることで、入社後のミスマッチや早期離職を防げます。採用のばらつきや面接業務が属人化している企業は、コンピテンシー面接の活用がおすすめです。もし、「面接がうまくいかない…」「良い採用ができていない」そんな悩みがあれば、面接代行に相談してみましょう。採用に関するノウハウを持つアズライトになら、悩み解決の力になれるでしょう。問い合わせはこちら≫