採用手法
採用方法
2026.2.8
この記事の監修者:
株式会社アズライト 佐川稔

「応募が集まらない」「せっかく採用しても早期離職が多い」
採用活動において、そんな課題を感じている採用担当者は多いでしょう。
日本では生産年齢人口が減少し、価値観や働き方も多様化するなか、従来の一律的な採用方法では人材確保が難しくなっています。
こうした状況を打破する手段として、年齢・性別・国籍・障がいの有無などにとらわれず幅広い人材を受け入れる「ダイバーシティ採用」が注目されています。
そこで今回は、ダイバーシティ採用の意味や背景、企業にもたらすメリット・デメリット、成功させるための具体的な取り組みまでを体系的に解説します。

ダイバーシティ採用とは、性別・年齢・国籍・障がいの有無に加え、価値観や働き方の違いも尊重し、多様な人材を公平に受け入れる採用方針です。
従来の「企業文化に合う人材」だけに偏ると、組織が均質化し変化への対応力が弱まります。
表層的多様性(性別・年齢など)と深層的多様性(価値観・経験など)を持つ人材を受け入れることで、イノベーションや競争力の向上が期待できます。

日本企業を取り巻く労働環境は大きな転換期を迎えています。ここでは、ダイバーシティ採用が注目されている背景について解説します。
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年の約8,800万人をピークとして減少が続いており、2065年には約4,600万人まで落ち込むと見込まれています。40%超の減少は、企業の人材確保にも深刻な影響をもたらすでしょう。
こうした状況下では、従来の「若年・男性・正社員」に偏った採用では限界があり、多様な人材を受け入れるダイバーシティ採用が、企業の持続的成長に欠かせない戦略となりつつあるのです。
年度 | 生産年齢人口(万人) |
|---|---|
1995 | 約8,800 |
2020 | 約7,500 |
2040 | 約6,000(予測) |
2065 | 約4,600(予測) |
※出典:内閣府「1 高齢化の現状と将来像|平成30年版高齢社会白書(全体版)」
グローバル化の進展により、国籍や文化、宗教、言語など多様な背景を持つ人材が同じ職場で働く環境が広がっています。海外との取引や多国籍チームでの連携が日常的となり、企業には柔軟な価値観の受容と異文化対応の姿勢が不可欠です。
このような背景のもと、多様な視点や発想を持つ人材を積極的に登用するダイバーシティ採用が、競争力を高める戦略として注目されています。画一的な価値観に頼らず、多様なニーズに応じた対応力が求められているためです。
実際に外国人労働者の数は増加傾向にあり、多文化共生が国内でも現実のものとなりつつあります。
働く目的が多様化していることも、企業におけるダイバーシティ採用の重要性が高まっている理由の1つです。かつては生活費や昇進といった経済的理由が主流でしたが、現在は社会との関わりや健康維持など、非経済的な動機も重視されています。
年代別では、30〜50代は家族や生活水準、60〜64歳は健康や社会参加を重視する傾向です。これらの価値観の違いに応じて、制度や働き方を柔軟に見直す必要があります。
インターネットの普及と価値観の変容により、消費者のニーズは「モノ消費」から「コト消費」「イミ消費」「エモ消費」などへと広がっています。
特に若年層では、所有よりも体験や共感、社会貢献に重きを置く傾向が強まり、市場全体も画一的な商品・サービスでは対応しきれない状況です。
柔軟な発想で変化を受け止め、多様な価値観に寄り添う企業姿勢が求められています。そのためにも、多様な感性や経験を備えた人材を採用し、組織に新たな視点を取り込むことが重要です。

多様な人材を積極的に受け入れる「ダイバーシティ採用」は、人手不足の解消だけでなく、企業の成長力や競争力を高めるうえでも大きな意味を持ちます。
ここでは、ダイバーシティ採用が企業にもたらす主なメリットについて解説します。
ダイバーシティ採用によって、多様な価値観や経験を持つ人材が集まると、従来にない発想が生まれやすくなります。単一的な構成では見過ごされがちな視点も、多様な環境では自然に浮かび上がり、新たな商品やサービスの創出につながります。
実際、異なる経歴やスキルの組み合わせは多角的な課題解決を可能にし、多国籍・多文化のチームはグローバル対応や商品開発にも有利です。
ダイバーシティ採用は、多様性を尊重しつつ柔軟な働き方を推進し、組織全体の生産性向上につなげる取り組みです。
リモートワークやフレックス制度の導入により働き方の選択肢が広がり、業務フローや人事制度の見直しも進みます。これが効率的な業務運営の定着を後押しします。
主なメリットは以下のとおりです。
柔軟な制度整備により業務効率が向上し、ムダが削減できる
多様性に配慮した評価制度の見直しが、モチベーション維持や離職防止に貢献する
個々の能力を発揮しやすい環境が、生産性と成果向上を促進する
ダイバーシティ採用の推進は、多様性を尊重する企業文化の醸成につながり、社員のエンゲージメント向上を促します。価値観や経験が受け入れられていると実感できれば、貢献意欲も高まりやすくなります。
フレックス勤務やパートナーシップ制度、アンコンシャスバイアス研修などの取り組みは、心理的な安心感の醸成と離職率の改善に貢献する好例です。
ダイバーシティ採用は、企業が多様性を尊重する姿勢を社会に示す手段にもなります。性別・年齢・国籍・障がいの有無にかかわらず人材を受け入れることで、「公平で先進的な組織」という企業イメージが醸成されます。その結果、求職者の共感と応募意欲を高める効果が期待できるのです。
加えて、ESGやSDGsを重視する姿勢は、投資家や取引先、顧客からの信頼獲得にもつながります。

ダイバーシティ採用は、多様性を活かした組織づくりを目指すうえで効果的な戦略ですが、その一方で新たな課題や対応すべきリスクも存在します。
ここでは、ダイバーシティ採用における主なデメリットについて解説します。
ダイバーシティ採用では、性別・年齢・国籍・価値観など多様な人材を受け入れるため、従来の制度では対応が難しい場面も生じます。特に日本企業は評価基準やキャリアパスが画一的で、柔軟な制度設計が課題です。
スキルがあっても企業文化に適応できない、あるいは多様性を活かせない配置となることもあります。そのため、多面的な評価と透明性ある制度づくりが不可欠です。
ダイバーシティ採用を進める企業では、日本に根強く残る画一的な価値観との摩擦から、ハラスメントのリスクが高まりやすくなります。
多様な人材が共に働く職場では、無意識の偏見や固定観念に基づく言動が、相手にとって差別的・攻撃的に受け取られるおそれがあります。
特に以下のような場面では、トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
宗教や食習慣への無理解からの発言
性的指向を軽視する言動
年齢や性別に基づく役割の押し付け
制度整備に加え、全社的なハラスメント研修の実施や相談窓口の設置が、問題の防止において重要な役割を果たします。
ダイバーシティ採用は多様性の尊重を促進する一方で、職場に適応できず早期離職につながる懸念もあります。特に外国籍や異業種出身の人材は、言語・文化・業務スタイルの違いから既存の働き方と衝突しやすく、育成コストの回収が困難になるケースもあります。
対策としては、OJTや1on1面談による期待値の共有、日本語研修や異文化トレーニングの実施、メンター制度の導入などが効果的です。採用後の丁寧なフォロー体制が成功のポイントとなります。
ダイバーシティ採用を進めるうえで、日本企業が直面しやすい課題の1つが「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。性別や年齢、学歴、国籍などに基づく思い込みが、採用や評価に影響する恐れがあります。
バイアスを完全に排除することは難しいものの、研修や意識調査、書類選考時の情報非表示、質問内容の統一などで影響を軽減できます。組織全体で継続的に取り組むことが、多様性を活かすうえで重要です。

ダイバーシティ採用は、導入するだけで効果が表れるものではありません。
ここでは、ダイバーシティ採用を成功に導くための具体的なポイントについて解説します。
柔軟で最適化されたプロセス設計により、多様な人材の採用を実現できます。特に日本では、年齢・職歴・国籍を問わず候補者を公平に評価できる体制づくりが求められています。
従来の一律的な採用手法では、多様な価値観やスキルを持つ人材を十分に受け入れられません。そのため、以下のような観点でプロセスの見直しを進める必要があります。
面接手法:オンライン・録画・対面の併用により応募者の事情に応じた選択肢を提供
評価基準:経験年数よりもスキルや成果を重視する評価軸への転換
働き方:リモート勤務や副業容認、フレックス導入による多様な就労形態の受け入れ
こうした取り組みは管理工数の増加につながる可能性もあります。しかし、採用KPIを設定し、定期的な振り返りと改善を重ねることで、質と量を両立した母集団形成が実現できるのです。
採用後の受け入れ体制を整備することも、多様な人材が力を発揮できる環境づくりにおいて重要です。制度や風土が不十分な状態では、早期離職やトラブルにつながる可能性が高まり、ダイバーシティ採用の効果が十分に得られません。
特に、外国籍社員や育児・介護と仕事を両立する人材にとっては、柔軟な働き方と支援制度の両立が定着のポイントとなります。
そこで以下のような工夫が求められます。
テレワークやフレックスタイム、短時間勤務制度の導入
異文化理解や受け入れ側向けの研修の実施
生活面を支える相談窓口や行政手続きのサポート体制
こうした体制を整えることで、採用した人材が企業の一員として安心して働き続けられる環境をつくることが可能になります。
人事・評価制度を見直すことは、多様な人材がそれぞれの力を発揮できる職場づくりにおいて不可欠です。従来の年功序列型や画一的な基準では、多様な働き方や価値観に対応しきれず、公平性を欠くおそれがあります。
特に短時間勤務や在宅勤務などを選ぶ社員が不利にならないよう、成果を軸とした評価への転換が必要です。
例えば以下のように、個々の特性に応じた複数の評価軸を設けると、納得感ある制度運用が可能になります。
成果指標:目標達成率、売上貢献度
行動特性:チーム連携、改善提案の頻度
多様性への配慮:ダイバーシティ推進への主体的関与
一人ひとりの事情に対応できる柔軟な働き方の仕組みを整えることが、多様な人材にとって安心して働ける職場づくりにつながります。
育児や介護、通院、信仰上の配慮など、従業員の背景はさまざまであり、それらを尊重する制度づくりが定着率やエンゲージメントの向上につながるのです。
例えば、以下のような勤務制度を取り入れると、多様性を受け入れやすい環境を構築できます。
フレックスタイム:育児や通院の時間調整に対応
テレワーク:地理的制約や体調面の不安を軽減
育児・介護休暇:家庭状況に応じた柔軟な働き方を可能にする
このような制度は大企業だけでなく、中小企業でも十分に導入可能です。
ダイバーシティ採用を円滑に進めるうえでは、新たな人材の受け入れ体制に加えて、既存社員との信頼関係の構築も重要です。
異なるバックグラウンドを持つ人材が加わる際、既存社員が不安や戸惑いを覚えるケースは少なくないため、相互理解を促進する取り組みが必要です。特に、企業の方針や意義を共有し、心理的安全性を確保することが重要になります。
信頼関係を形成するための主な施策としては、以下のような内容が挙げられます。
DEI説明会を通じて採用背景と目的を共有し、全社的な理解を深める
無意識バイアスに関する研修を導入し、偏見や先入観への気づきを促す
社員同士が交流できるイベントを開催し、日常的な対話を活性化させる
多様性推進の成功事例を社内に展開し、前向きな受容意識を育てる
こうした取り組みを段階的かつ継続的に進めることで、多様な人材が活躍できる土壌が整い、結果的に組織全体の連携力や生産性の向上にもつながります。
多様な人材を受け入れ、組織の可能性を広げるダイバーシティ採用は、企業の持続的な成長に欠かせない施策です。労働人口の減少や価値観の多様化といった社会的背景を踏まえると、従来の採用手法では人材確保が難しくなることは明白です。
一方で、制度設計や職場環境への配慮を怠ると、早期離職やハラスメントなどの課題も生じる可能性があります。成功のポイントは、柔軟な採用プロセスと公正な評価体制、受け入れ体制の整備にあります。
多様性を力に変えるために、自社の採用戦略を見直していく際に、お困りのことがあればアズライトに相談ください。採用のプロフェッショナルが解決へ導きます。
この記事の監修者
株式会社アズライト 佐川稔
株式会社アズライト代表取締役。採用がうまくいかない優良企業を採用できる企業へ改革するために、戦略・運用に特化した採用コンサルティングファーム「株式会社アズライト」を創業。キャリアに悩む方々のために就活・転職相談BAR「とこなつ家」を池袋にて共同経営中。
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